中日和田一浩外野手(38)が今季挑戦する「3冠打法」を実戦で初めて披露した。24日、韓国LGとの練習試合(北谷)に「5番左翼」で実戦初登場すると、第2打席に中前打を放った。野球人生を通して完成を目指す新打法だけに、ほんの始まりに過ぎないが、集まったファンにとっては25年ぶりのセ・リーグ3冠王誕生の期待を抱かせる“今季初ヒット”だった。

 和田ならではの力強く、球足の速い打球がセンターへ抜けていった。3回の第2打席、カウント1-1から外角のボールをひっぱたいた。「3冠打法」をお披露目した今季初実戦でいきなり、ヒットが飛び出した。

 「きょうはどうこうはないよ。ただ出ただけ。体が動いてよかった。それだけです。これで何かをつかんだら、怖いです」。

 2打数1安打、3回でお役御免。本人はまったく初ヒットを意に介さなかったが、期待の大きさは球場の雰囲気が物語っていた。初回にまわってきた実戦初打席。「5番、レフト、和田」とアナウンスされるとスタンドから、この日1番の拍手がわき起こった。ファンは知っていた。今季、和田が何をやろうとしているのか。そして、やってくれるであろうことを。それほどの拍手だった。

 打席に入った和田の両足は、本塁と平行にそろっていた。昨季までのややオープンから、完全なスクエアに、スタンスを変えた。ここから左足をオープンに踏み出していくことで「視界」が広がる。ボールが見やすくなる。打撃の無駄が省かれる。これが、和田の言う新打法だ。完成すれば、確実性、飛距離、すべてが増す。だれより上に立てる。つまり「3冠打法」なのだ。

 中日にFA移籍した08年から始めた落合監督との究極を求める旅-。MVPを獲得をした昨季の打法を捨てて、今季もまた、さらに上を目指していく。ただ、この日の和田のコメントが物語っているように道のりが険しいことは本人が最もよく知っている。

 「スタンスを数センチ変えただけで、上(半身)も下(半身)も、すべてが変わってくる。それをものにするには1年、それ以上かかることだってある。それほど難しいことなんです」。

 新打法と言っても、見た目には左足の位置が少し変わったに過ぎない。だが、打者にとってはまったく別のことをやっている感覚なのだという。生半可な決意で挑めるものではない。実際、実戦に登場したのは野手の中で和田が最も遅かった。他の主力が試合に出ている間、だれもいない屋内練習場では1人、マシン相手にバットを振る姿があった。そして、ついに解禁した実戦編。開幕までの1カ月はもとより、その先をも見据えた挑戦が幕を開けた。【鈴木忠平】

 [2011年2月25日10時30分

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