<阪神1-3横浜>◇24日◇甲子園

 何としても勝ちたい。この試合にかける思いを象徴する投球だった。2点のリードをもらい、迎えた4回2死一、二塁で打席には金本。横浜山本省吾投手(32)は考えた。「風も強かったし、右翼に飛んでも(スタンドには)入らない」。全5球直球勝負。キレのあるカットボール、スライダーではなく、「決して走っていたわけではなかった」という直球に勝利への気持ちを込めて、きっちり中飛に打ち取った。

 オリックスから移籍1年目ながら開幕投手を任された。プロ11年目で初の大役に、「新しいチームだし、何とかチームに認められないといけない」と強い決意を見せていた。しかし結果は6回途中4失点。チームは勝利したものの、悔しさが先に立った。中4日で先発した続く17日のヤクルト戦も10安打を浴び4失点。初黒星となったこの試合から、連敗が始まっていた。

 吉田投手コーチは山本の長所を「いつ何時でも自分から勝負を仕掛けられる、打者に向かっていく姿勢」と評する。そのスタイルを貫きながら、勝つためにフォームの修正に着手。左足のかかとに乗っていた重心を前体重に戻し、球威とキレを取り戻した。

 8回途中まで投げて1失点。チームの連敗を5で止めた。「浜風を感じるくらいの余裕を持って、自分のペースで試合をコントロールできたと思う。このユニホームを着ての初勝利は一生忘れないと思う」という表情は、安堵(あんど)感に満ちていた。「投手陣の真ん中で回りたいという気持ちもある。今日は何としても期待に応えたかった」。強気の113球で、移籍後初勝利だけではなく、チームの信頼も勝ち取った。【佐竹実】