<広島0-5西武>◇25日◇マツダスタジアム

 西武のエースは、投げても打ってもスゴイ!

 涌井秀章投手(24)が広島打線を相手に9回8安打8奪三振と好投し、今季初完封となる3勝目を挙げた。6日に右肘の違和感で登録を抹消されたが、復帰してから2試合連続完投と完全復活を印象づけた。普段は立たない打席で安打を放って追加点を呼び込むなどバットでも活躍。ソフトバンク和田と並ぶ交流戦最多タイの19勝目を自らの力でもぎ取った。

 何でもできる24歳の面目躍如だった。交流戦、ビジターゲーム、そして涌井の先発。3つの要素がそろった時だけ、レギュラーシーズンでエースの打撃を拝める。そして「バッター涌井」は今年も西武ファンの期待を裏切らなかった。1点リードの3回、先頭で涌井が打席へ。広島今村の外角スライダーを器用に拾って左前へ落とした。それをきっかけにこの回2点を追加。見慣れないヘルメット姿の背番号「18」が、確かに攻撃をけん引していた。

 昨季の横浜戦で猛打賞に4打点と暴れた。いずれも交流戦では投手史上初。この日も能力の高さを見せつけ、渡辺監督を「簡単にヒットにするよね」とうならせた。本人は「平尾さんに『野球なめんなよ』って言われました」と苦笑するが、これが野手陣のプライドをくすぐったのか打線は13安打。思わぬ相乗効果があるのかもしれない。

 春季キャンプでよく一緒に食事へ出掛けていたルーキーの大石が話していた。「お酒も飲めるし、歌もうまい。涌井さんは弱点がないんですよ」。通信対戦ゲーム「ボンバーマン」でチーム内に敵なしなのは有名な話。最初は苦戦していたスマートフォンも、使いこなせるようになるのにさほど時間はかからなかった。ひとたびグラウンドに出れば、他を寄せつけない圧倒的な練習量を誇る。“公私”ともに器用さは群を抜いている。

 本業のピッチングも抜かりなかった。直球は130キロ台のボールも多く、調子はいまひとつ。栗原には4安打された。それでも、使えると判断したチェンジアップと速いスライダーを多投し、9回完投では自己最少に並ぶ112球で9個のゼロを並べた。ビジターゲームでは打席に入る分、負担が増える時期。だからこそ、何でもできる男の本領発揮。打っても投げても、とにかく絵になる交流戦男だ。【亀山泰宏】