<広島8-6楽天>◇16日◇マツダスタジアム

 雨が降りしきる悪条件で両軍合わせて5失策。どちらに転んでもおかしくなかった。楽天が9回に追い上げ2点差で終わっただけに、4-1で迎えた6回、広島が1安打で奪った1点が実に重かった。野村謙二郎監督(44)が「どうしても欲しかった1点。試合のポイントになった」と明かしたサインプレーが決まった。

 2死一、三塁、打席は投手の前田健だった。カウント2ストライクと追い込まれた。ここで広島ベンチが動いた。一塁走者の石原が飛び出した。投手ヒメネスが動きにつられた。三塁に背を向けた状態で、ボールを持ったまま石原へタッチに行った。一連の動きを確認し、三塁走者の天谷がスタート。ボールを受けた一塁手のガルシアが本塁送球したが間に合わず生還した。「フォースボーク」と呼ばれるサインプレー(記録は重盗)。打者前田健、2死、2ストライクという、バットでの得点が期待薄な状況で勝負手が決まった。

 広島は3月30日、巨人との練習試合でも同様のプレーを成功している。野村監督が「練習していた。相手にダメージが大きかったと思う」と言うまでもなく、楽天にとってはしてやられた、としか言いようがなかった。状況を俯瞰(ふかん)で見ていた二塁手高須が説明した。

 高須

 投手が野手にすぐボールを渡すのがベスト。セカンドに入っていた(松井)稼頭央にトスするべきだった。セ・リーグでは有り得るプレー。相手がうまかった。

 ベテランは「(楽天名誉監督の)野村さんの時は一塁走者が転んでいた」とも付け加えた。楽天名誉監督が好んで使う戦術だった。各チームがキャンプで練習する、年に1度あるかないかのプレー。楽天は投手が初登板のヒメネスで、一塁手は今月加入したガルシアという盲点を突かれた。痛手を教材とするしかない。【宮下敬至】

 ◆フォースボーク

 走者一、三塁の場面で行われるサインプレー。三塁走者に背を向ける左腕投手に対し、2人の走者が連動して動くことでけん制動作に動揺を与え、ボークを誘発し三塁走者が生還すること。この場合の「フォース」は「強制する」の意味。ここから解釈が拡大し、右投手の場合でも一塁走者が故意に飛び出し、守備陣の注意を引きつける間に、三塁走者がホームを陥れるプレーに対して用いられている。