<西武5-4楽天>◇26日◇西武ドーム

 文句なしの投球で守護神デビュー戦を飾った。交流戦後に先発から配置転換された西武のルーキー牧田和久投手(26)が、1点差の9回から登板し、3者凡退に抑えてプロ初セーブを挙げた。下手投げ、直球の球速は平均で120キロ台という、クローザーとしては“珍種”の存在。それでも持ち前のテンポの良さとマウンド度胸で十分な適性を見せ、抑え不在に泣いてきたチームに希望のあかりをともした。

 プロに入って初めての感覚が全身を支配していた。1点差の9回、しびれる場面で「ピッチャー牧田」のコールにドームが沸いた。「歓声がすごかった。期待されてるんだな、と。マウンドで足が震えてました。初先発の時でもなかったこと。表情に出さないよう意識しました」。言葉通り、はた目には緊張をみじんも感じさせなかった。3人を9球で料理。最速が130キロを少し超えるくらいの直球も、考える間を与えないテンポも、先発時と変わらない。牧田は揺るぎなかった。

 社会人時代、大事な試合はすべて先発完投を命じられていたほど、生粋のスターター。抑えは「社会人時代の調整登板くらい」。だから、先発1イニング目の気持ちで臨んだ。先発した10試合、初回に34人の打者と対戦したが、被安打わずか3で無失点。立ち上がりは大得意なだけに、裏づけはあった。渡辺監督も「このピッチャーならやられても仕方ないとみんなが納得するのが抑え。現状そう思わせるのは牧田。あのくらいはやると思ってる」と最大級の賛辞を並べた。

 援護がない中で先発として試合をつくり、ここにきての抑え転向。首脳陣の起用に応え続ける“孝行息子”ぶりは、プライベートでも変わらない。10日広島戦に登板後、休みを利用して実家のある静岡・焼津に帰省。「プロ入りの報告もできてなかったので」と祖父母の墓参りをし、掃除して線香をあげてきたという。さらに両親を家電量販店へ連れていき「テレビ、好きなのを買っていいよ」とひと言。結局、息子の登板試合を映像で残したいという希望に沿って、録画もできる「40インチのアクオス」をプレゼントした。

 すでに守護神の自覚は十分。「今日は良かったけど、次どうなるかは分からない。抑えて当たり前じゃないけど、抑えないとチームの勝利はない」と言い切った。牧田がいる限り、後ろが弱いとは、もう言わせない。【亀山泰宏】