<西武7-5オリックス>◇31日◇西武ドーム

 大器が花を咲かせようとしている。2番手で1回2/3を1安打無失点に抑えた西武木村文紀投手(22)が、プロ初勝利を挙げた。「長かったです。ウイニングボールは親にあげますけど、最初は家に飾って眺めます」。今季中継ぎ登板11試合目。5年かけ、ようやく1勝にたどり着いた。

 少しひざを折ったセットポジションから、クイックモーション気味に投げ込む豪快なフォーム。課題の制球は安定し、27球中23球を常時140キロ後半の速球で押しまくった。背番号は渡辺久信監督(45)の現役時代と同じ「41」、高卒ドラフト1位で右の本格派という「ナベQ2世」。しかし、昨年はどん底にいた。3月の2軍戦で右肘を疲労骨折。手術を選択し、登板はその1試合に終わった。痛々しく残る手術痕を指さし「肘がうずくんで、雨が降る時とかが分かるんです」と冗談めかして話せるのも、ケガを乗り越えた今だからこそだ。

 今年の春には車を運転中に追突事故にあった。2軍で好投し、1軍昇格が検討されていた時期。むち打ち損傷のような症状に悩まされ、その話もなくなった。そんな折、購入してまだ1年もたたない車をあっさり買い替えた。頑丈そうな「ハマー」を前に「この車ならぶつけられても大丈夫です」と笑わせた。ずっと明るさだけは失わなかった。

 渡辺監督は「2軍からずっと見てきた選手。ベールを脱ぎそうで着てしまうところがあったけど、やっとスタートしたかな」と目を細めた。今年の大卒ルーキーと同い年。遅れてきた斎藤世代は「大石より先に勝てて良かった」と言った。真のナベQ2世になる道が、ここから始まる。【亀山泰宏】