<楽天4-3西武>◇8月31日◇盛岡

 西武菊池雄星投手(20)はいつも以上に雄弁だった。故郷盛岡で味わったプロ初黒星を、すがすがしいほどに受け入れた。4回無死一、二塁から楽天山崎武司内野手(42)に3ランを被弾。チェンジアップを完璧に打たれた。1回1死一、二塁から遊ゴロ併殺に仕留めたボールで再現を狙ったが、高めに抜け「完全に真ん中でした。山崎さんの方が2枚も3枚も、それ以上に上でした」。18日の対戦でも1発を浴びた相手に敬意を表した。

 岩手県営野球場は特別な場所だ。小学4年の時、1人で電車とバスを乗り継いで球場に向かい、西武の試合を観戦した。花巻東高の2年生エースだった08年の夏は準々決勝で、自分のミスもあって敗戦。翌09年は優勝して夏の甲子園出場を決めると、興奮のあまりチームメートにキスして周囲を驚かせた。

 09年の県大会決勝以来、768日ぶりに立った地元のマウンド。満員の観衆は温かく出迎え、菊池はプロ最多の117球で8回を投げきって応えた。終盤にはこの日最速となる147キロを計測。山崎との対戦についてはバッテリーに苦言を呈した渡辺監督も「ここで投げる意味もあった。東北に元気を与えようと諦めない気持ちを最後まで見せた」と姿勢をたたえた。

 今後も先発ローテの一角として回る。「(地元で投げられて)感謝しかない。幸せ者だと思う」と言いつつ「落としちゃいけないゲーム。勝てるピッチャーになって戻ってきたい」と付け加えた。岩手の人たちに元気な姿は見せられた。今季最多タイの借金15に膨らんだチームを救う仕事が、残っている。【亀山泰宏】