巨人吉村禎章1軍打撃コーチ(48)が退団することが10月31日、分かった。統一球に苦しんだ今季、打線不振が敗因の1つだった。原辰徳監督(53)の大事な右腕だが、球団は契約を延長しないことを決断した。香田勲男投手コーチ(46)も退団する。一方で、ヤクルトなどで活躍し、08年からBCリーグ群馬の監督を務めていた秦真司氏(49)を招聘(しょうへい)することが、分かった。また、BCリーグ新潟の橋上秀樹前監督(46)もスタッフとして招き入れることを計画している。クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで敗退した巨人が来季へ向け動きだした。

 CS敗退が決まった神宮球場で、清武GMは「このチームをやっぱり大きく変えないといけないと思わせる試合でした。中継ぎ陣、打撃陣、外国人、1人1人が強い選手になってほしい。今年は慎之助にはじまり、最後は藤村と(故障者が多く)。120試合以上出ている選手が3人くらい。強い選手が必要」と、抜本的見直しへの決意を語った。チームの再出発へ、痛みを伴う改革を行う。

 統一球への対応に苦しんだ。チーム打率はリーグ4位の2割4分3厘、本塁打数も昨年より118本減の108本。主力が相次いで故障離脱したこともあったが、投手陣はチーム防御率2・61とリーグ2位の好成績を残しており、打線の不振がV逸の大きな要因となっていた。吉村氏の熱心な指導ぶりには定評があるが、球団は来季のV奪還に向けて新たな風を入れるべく、まずは組織改編に踏み切った。吉村コーチは「残念です」と球団を離れる心境を明かし「監督、球団の助けになれなかった。担当として、責任を感じてます」とも話した。

 野手部門には、2人の頭脳が加入する。ヤクルト、日本ハム、ロッテで活躍し、現役引退後はNHKで解説もする理論派の秦氏がコーチとして入閣。秦氏はこの日、BC群馬に退団を申し入れ、了承された。また、肩書はコーチではないが、橋上氏も一員となる。同氏は楽天時代、名将・野村名誉監督をヘッドコーチとして支えてきた。頭脳派ノムさんが率いた「ID野球」時代のヤクルトを知り尽くした2人が、豪快な空中戦を特徴とする巨人野球に、緻密さという新たなエッセンスを導入することが期待される。

 接戦を制するための新兵器を、データの活用方法に見いだした。「初物に弱い」という長年の弱点を今季も露呈。プロ初勝利の献上は実に10投手に及んだ。高い技術レベルを持つ打者のセンスに頼る攻撃は、時に爆発的な破壊力を発揮する一方で、沈黙するとなかなか抜け出せない「もろさ」を併せ持っていた。秦、橋上両氏は、狙い球の絞り方や根拠などを明確にすることで、苦手意識の払拭(ふっしょく)や、打撃力向上を図ってきた。その方法論の導入が狙いといえそうだ。また、広島を今季限りで引退した豊田清投手(40)も2軍コーチに加わる。

 ◆秦真司(はた・しんじ)1962年(昭37)7月29日、徳島県生まれ。鳴門時代に島田茂投手(元ロッテ)とのバッテリーで甲子園出場。法大を経て84年ドラフト2位でヤクルト入団。90年に外野手転向。91年には球宴に出場した。92年、西武との日本シリーズ第6戦でサヨナラ本塁打。99年に日本ハム、00年にロッテへ移籍して引退。現役通算16年の成績は1182試合、2790打数732安打(打率2割6分2厘)、97本塁打、341打点。01年にロッテ2軍打撃コーチ、05、06年に中日の捕手コーチ、08~11年はBCリーグ群馬の監督を務めた。