<DeNA0-3西武>◇17日◇横浜

 決意の完封だ。西武岸孝之投手(27)が、2010年6月6日の中日戦(ナゴヤドーム)以来、2年ぶりに完封勝利を飾った。直球の球威が最後まで落ちず、チェンジアップも効果的に決まった。4安打9奪三振。ケガに苦しめられた右腕は今季、「エースになる」という思いを胸に秘めている。その決意を示す完封劇となった。

 余力たっぷりに見えた。9回のマウンドでも、岸には躍動感があった。「いざとなればワク(涌井)がいると思ったので、思い切っていけました」。2年ぶりとなる完封勝利の瞬間、両拳を握りしめて喜びをかみしめた。

 1回、いきなり連続三振でスタート。直球のキレの良さを感じさせた。岸の感覚では、途中、体が重くなったそうだが、5回表、遊撃内野安打を放った際に一塁へ全力疾走。「あのダッシュでキレが戻った」と振り返った。その裏、5回1死からは4連続三振。そこから最後まで、隙なく一気に投げきった。

 交流戦を前に気持ちを切り替えて、この日の登板に備えていた。前回登板だった9日の楽天戦(Kスタ)で、8回1失点の好投も報われず敗戦投手となった。その翌日、オフをもらった岸は仙台の自宅に残って心身ともにリフレッシュ。そこまで2連敗していた悪い流れは断ちきっていた。

 今季は強い決意を持って取り組んでいる。キャンプインを前にしたある日、きっかけとなったのは中島と栗山との会話だった。「遠慮せずにエースを目指せ。もっと引っ張っていけ。それだけの力があるんだから」と、意識改革を促された。

 今年初めて「開幕投手を狙う」と言ったのも、2人の言葉をきっかけに、このままではいけないと思ったから。「ケガで迷惑をかけていたし、もう6年目ですからね」。西武のエースを目指すと決めていた。

 渡辺監督も「今年の岸はキャンプから取り組み方が違っていた」と、岸の思いを感じ取っていた。この日の完封を「普段の岸の投球をしてくれた。すごくいいというわけではなかった」と評したのも、涌井が抜けた先発投手陣の柱として、岸に期待するものが大きいからだ。

 交流戦を2連勝でスタート。前夜のおかわり復活劇に続いての快勝だ。「チームの勢いに乗せてもらった。借金を少しずつ返して、貯金生活を送れるようにみんなで頑張りたい」と岸は、そのためにも背中で引っ張る。勝利を積み重ねた先に、エースという称号が待っている。【竹内智信】