労組日本プロ野球選手会(新井貴浩会長=阪神)は20日、大阪市内で臨時大会を開き、来年3月に開催予定の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に参加しない方針を全会一致で決議した。米国が主導権を握る収益配分の不均衡を問題視。1年前から日本代表を支援する企業のスポンサー料を日本側に譲渡することなどを求めてきたが改善されなかったため、不参加を決めた。一方、すでに大会への参加を表明している日本野球機構(NPB)の加藤良三コミッショナー(70)は、早急に選手会側と話し合う意向を示した。

 選手会の決断は重いものだった。臨時大会後に会見した新井会長はこう切り出した。「先ほど行われた臨時大会で、WBCに出場しないということが正式に決定されましたので、皆様にご報告したいと思います」。3連覇がかかるWBCへの不参加を表明した。

 選手会は、かねてスポンサー収入の権利について改善すべきと主張してきた。現在はスポンサー料、グッズのライセンス収入などはすべて、MLBとMLB選手会が設立した大会運営会社WBCI(ワールド・ベースボール・クラシック・インク)に入る仕組み。そのため大会そのものではなく、侍ジャパンというチームを支援したい企業のスポンサー料も、すべてWBCIに入る。

 この点について選手会の松原徹事務局長は「本来、日本が持っている権利だ」と主張する。選手会によれば、大会のスポンサー収入の約70%は日本がもたらすものという。チームスポンサーが認められれば、日本代表の収入は大幅に増えることが見込まれる。

 選手会は昨年の臨時大会で「事態が改善されない場合はWBC参加を見送る」と決議。その後、当時のオーナー会議の議長だった楽天島田オーナーらが渡米して米国側と交渉を行ったが、目に見える成果はなかった。新井会長は「あれから1年。主催者から何の返答もなかったので、苦渋の選択をせざるを得なかった」と、米国側からの歩み寄りがない現状を要因に挙げた。

 過去2回の大会で世界一に輝き、野球ファンのみならず日本中から期待されている。新井会長もその点は理解しており「僕たち選手ももちろん、大会に出場したいと思いました。ただ、5年後、10年後の世代のことも考えなければならなかった」などと話した。

 常設化された侍ジャパンには協力していく方針。今後は、国際野球連盟(IBAF)と連携するなどして、参加国が平等に利益を得られる新たな国際舞台について考えていくという。新井会長は「WBCを前提とした侍ジャパンではなくて、新しい国際大会を作っていくことも考えています」と話した。

 このまま、3大会連続世界一の夢は絶たれてしまうのか。「条件が改善されれば参加する可能性はあるのか?」の問いに、新井会長は「仮定の話に対して、今この場で正確なことを答えることはできません」と含みも持たせた。今後の行方が注目される。