<巨人5-0広島>12日◇東京ドーム

 出てくる、出てくる、

 巨人からまたまたプロ初勝利が生まれた。4年目の笠原将生(しょうき)投手(21)が6回6安打無失点。3試合目の登板で待望の白星を手に入れた。父栄一さん(46)は元ダイエー投手。栄一さんは未勝利に終わったが、優勝目前の大事な一戦で、息子が笠原家の悲願を達成した。前日11日の小山、そして笠原の「ゆとりローテ」でもチームは4連勝。原監督は監督通算700勝を積み上げ、優勝マジックを10とした。

 思い切り腕を振った。3回2死満塁。広島4番エルドレッドへの3球目直球が高めに浮いた。捕手阿部が険しい表情で立ち上がる。「思い切り腕を振ってミット目掛け投げてこい!」。この言葉で我に返った。そこから3連続直球で空振り三振を奪いピンチ脱出。雄たけびを上げると、6回を無失点で投げ終えた。プロ4年目の初勝利に「最高にうれしいです!」と満面の笑み。ローテの谷間に現れた孝行息子に、原監督も「成長した姿を見ることができて非常に良かった」と喜んだ。

 野球をするのが運命だった。プロ野球選手の息子として生まれ、2歳で家の中にあったおもちゃのボールを投げた。父の現役時代の記憶はほぼない。だが「何となく野球をやらなきゃいけないと思ったんです。家系ですから。父の果たせなかった夢をというのはあります」。高1冬に投手に転向すると、プロのウイニングボールをあげることが夢であり目標になった。

 簡単ではなかった。5月3日に初先発したが4回で降板。2度目の先発予定直前のブルペンでは「きれいに投げよう」と力んで制球を乱し、登板を見送られた。「どうしよう。最悪です」。2軍でも結果を出せず「自信がなくなりました」と、どん底に陥った。

 そんな時、高校の先輩に「人生は1回だぞ」と励まされた。「『やるのは自分だ』って。堅苦しくやっても良い結果は出ないと思えたんです」。登板前日、帽子のつばに「楽しく」と書き込んだ。自分を信じ切れた先に、夢に見てきた“笠原家の1勝”があった。

 ウイニングボールは、オフに父に直接手渡す。今日13日に46回目の誕生日を迎える母早苗さんには勇姿をプレゼントにした。原監督、両親、お世話になった人すべてに白星をささげた。それでも、と笠原は言う。「父を超えたとは思ってません。雲の上の存在。いつか超えられたかなと言えるように頑張りたい」と、夢の続きを描いた。【浜本卓也】<笠原将生(かさはら・しょうき)アラカルト>

 ◆生まれと球歴

 1991年(平3)1月9日生まれ。福岡県出身。福岡工大城東から08年ドラフト5位で巨人入団。右投げ右打ち。

 ◆恵まれた体格

 身長191センチで、体重は95キロ。足のサイズは29センチ。

 ◆野球一家

 父栄一さんは元プロ野球選手で、84年にドラフト1位でロッテに入団し、93年にダイエー(現ソフトバンク)に移籍。投手としてプロ通算7年で22試合に登板(先発13試合)し通算0勝8敗。弟大芽は、福岡工大城東の投手で今ドラフト注目の左腕。

 ◆球種

 最速148キロの直球を軸に、カーブ、スライダー、シュート、フォーク、チェンジアップ。

 ◆趣味

 音楽鑑賞。ナオト・インティライミの他、洋楽が好き。

 ◆好きな芸能人

 女優の夏菜。

 ◆特技

 サッカーのリフティング。ヘディングなら最高で連続130回を記録。