<ソフトバンク4-1日本ハム>◇9月30日◇福岡ヤフードーム

 今季限りで引退するソフトバンク小久保裕紀内野手(40)が、福岡のファンへ感謝の2打席連続アーチを放った。3回に左翼ポール直撃の逆転3号2ラン。5回には左中間へ4号2ランを追加し、全打点の活躍で優勝目前の日本ハムを粉砕した。福岡ヤフードームでの2打席連発は、ダイエー時代の02年4月3日ロッテ戦(当時の呼称は福岡ドーム)以来、実に10年ぶり。リーグ優勝はなくなったが、目標の2位へ諦めない姿勢を示した。

 小久保本人が、一番驚いていた。「ありえんな!

 ありえへん、2本も!

 もう本当にないな!

 …と思います。福岡のファンの皆さんの前で打ててうれしい。この歓声には“ありがとう”という言葉しか浮かびません」。打席に入る前のテーマ曲はSMAPの「ありがとう」。本拠地のファンへの感謝を、2本の美しいアーチで体現した。

 まずは1点を追う3回だ。2死一塁から逆転2ラン。打球の左翼ポール直撃を確認すると、手をたたいて大はしゃぎ。8月8日の日本ハム戦(帯広)以来の1発は、福岡ヤフードームでは今季初めてだった。「もうホームランは打てないと思っていたのでうれしいです!

 でもこれが本当に最後かもしれませんね。特にこの球場では。このすごい歓声は一生忘れません」。

 ところがこれは、最後ではなかった。5回も2死一塁から、今度は森内の低めスライダーをすくい上げ、左中間まで届けた。「思うように打球が飛ばなくなった」と引退を決めたが、2本とも全盛期を思わせる高い放物線。一塁側ベンチのナインも含め、球場全体がお祭り騒ぎとなった。

 「微差が大差」-。小久保がよく口にする言葉だ。「プロ野球に入ってくる人間は、スタートラインはみんな同じ。能力の違いなんてない。その中で1日10分でも人と違うことをすれば、1週間、1年、10年で大きく変わる」。入団3年目でスランプに陥った時、本を読み始めた。「野球選手としてだけじゃなく、人間性も磨かないといけない」という思いからだった。同じ本を7回も読んで、頭にたたき込むという。

 「もともと今日がホーム最終戦だったし、そのつもりでチケットを買って見に来てくれたファンの皆さんにホームランを見てもらえて良かった」。敵地4試合を挟み、8日の今季最終戦はホームで迎える。その41歳の誕生日に、再びバットでファンに感謝を届けるつもりだ。【大池和幸】