カープに万能スコアラーが誕生する。広島井生崇光外野手(31)が5日、今季限りの引退を申し入れ、了承された。投手と遊撃手以外の7ポジションで出場経験のあるユーティリティープレーヤーは、来季からスコアラーに転身する予定。現在、野手経験者のスコアラーは1人のみで、井生の転身は大きな“補強”だ。情報戦線の中で、マルチな男の活躍に期待がかかる。

 グラウンド上の戦いに力を与える情報戦に、広島が新たな力を注入する。正式に引退を申し入れ14年の現役生活に区切りを付けた井生に、スコアラーのポジションが与えられた。

 現在、広島のプロ経験を持つスコアラーは4人だ。巨人が今季から新たに戦略コーチという専門のポストを設けたり、他球団が各チームに担当スコアラーを付けることが常態化する中で、決して人手が足りているわけではない。球団としても以前よりスコアラーの強化は課題の1つ。井生の転身、加入は待望の“補強”となる。

 井生

 相手チームの偵察や各チームの状況をチームに伝えることは、やりがいがあると思う。野球が好きなことに変わりはない。チームの力になれたら。

 大きな決断を終えると、新たな任務に向け潔く気持ちを切り替えていた。4人のプロ経験スコアラーのうち、3人が投手出身者というのが現状。鈴木球団部長が「野手は1人しかしないし、捕手の目もほしかった」と説明するように、まさに適任だった。

 98年に守備力の高い遊撃手として評価されドラフト2位で入団。04年に外野にコンバートされると、内外野守れるユーティリティープレーヤーの地位を築いた。06年9月10日中日戦(広島)では捕手として出場するなど、1軍で投手、遊撃手を除く7ポジションで出場。右の代打要員としても重宝され、昨年7月15日中日戦で、リーグ史上最も遅いプロ入り13年目での初本塁打を放った。バイプレーヤーとして磨いた野球を見る目こそが、井生の財産だ。

 今後はパソコン教室に通い基礎的な能力を身につけ、来春キャンプから本格的にスコアラー業を開始する。広島一筋14年のいぶし銀が、貧打解消の一翼を担う。【鎌田真一郎】

 ◆井生崇光(いおう・たかみつ)1981年(昭56)3月12日、福岡・北九州市生まれ。東筑から98年ドラフト2位で広島入団。プロ13年目の昨季7月15日中日戦で、セ・リーグ史上最遅のプロ初本塁打を放つ。通算159試合に出場し、2割6分6厘、1本塁打、19打点。179センチ、80キロ。右投げ右打ち。