巨人に鉄壁の「エリア30」が出現した。宮崎で行われている春季キャンプ第1クール4日目の4日、投内連係の練習を行った。宮国椋丞投手(20)のフィールディングが群を抜いて素早く、捕球→送球のタイムが、他の投手より平均で0・25秒ほど速かった。チームは背番号「30」の広い守備エリアを目指すように、意思を統一した。堅い陣形で走者を刺す。

 ターンも送球も素早かった。背番号「30」の宮国は、投内連係であらゆるゴロに反応した。一、三塁手に捕球させず、ベースにくぎ付けにした。捕球してから三塁に送球の瞬間までのタイムを計測すると、0・41秒。他の平均的な投手と比べて約0・25秒も速かった。その上、送球自体も絶妙なコースだった。広い守備範囲で進塁を許さない「エリア30」を見せつけた。

 キャンプイン後のミーティングで、首脳陣は宮国と内海の守備力を好例として挙げた。投手陣には「0・1秒でも、フィールディングのスピードを上げるように」と通達した。

 コンマ1秒が勝敗を分ける。0・25秒とは、足の速い選手で、2メートルも走れる時間。秦バッテリーコーチは「1個のボールを何人で守るか。3人、4人…と増えていけば、無理な陣形になっていく。その分、組織としてディフェンス力が下がる」と説明。宮国については「2人(投手と捕手)で守れる領域が広い。チームの共通認識として、ある」と話した。捕手実松も「宮国だから、二塁、三塁でアウトにする勝負ができる場面がある」と話した。宮国が生み出す余裕が一、三塁手のチャージを最小限にとどめ、リスクの少ない守備陣形を可能とさせる。

 なぜ速いのか。宮国は「準備を大切にしています」と話した。準備は2点ある。右足の向きと、目だ。「捕球体勢に入る前、右足の内側を、目標に対して正面に向けます」と身ぶりで示した。二塁、三塁ベースに投げるときも、軸足の向きを決めておけばターンしやすく、制球も定まる。次は目。「足の向きを決めたら、捕球の前にボールから一瞬目を切って、守備位置を確認します。野手の方がベースに入る速度、場所を考えて投げます」と加えた。「捕ってから投げるのではない」極意を明かした。

 守備力と身体能力の相関関係については「ないと思う」と言った。「中学まで、ショートもやっていました。ゴールデングラブ…いつか、いただいてみたいですね」とひそかな目標を明かした。おのおのが周到に準備し「エリア30」が浸透すれば、巨人の防御力はさらに上がる。【宮下敬至】

 ◆巨人のゴールデングラブ賞投手

 第1回の1972年(昭47)から堀内が7年連続で受賞。さらに79年から西本が7年連続で選ばれた。桑田も計8度選出。この他、斎藤雅樹が4度、上原が2度、工藤とゴンザレスが1度ずつ受賞している。過去41回のうち30回で巨人の投手が受賞しており、好守の投手は巨人の伝統と言える。