<日本ハム0-11西武>◇21日◇札幌ドーム

 2年目の西武十亀剣投手(25)が、プロ初完封勝利を飾った。プロ入り最多の139球の熱投で、許した安打は5本。開幕3戦目の日本ハム戦では9回2死から2ランを浴び、快挙を逃したが、完璧なリベンジだった。父剛さんの57回目の誕生日に、白星をプレゼント。最速149キロの直球を軸に、緩急も自在に操った右腕の成長はどこにあるのか。「進化」に迫った。

 8回2死二、三塁、十亀はこの日最大のピンチを迎えた。カウント2ボール2ストライクからの6球目。左打者の谷口に対し、勝負球に選んだのはシンカーだった。外角低めに沈ませ、遊ゴロに抑えた。「フォークが良くないんで、シンカーで補えた」。昨季、一時は封印を決意したウイニングショットが、要所でさえた。

 ちょうど1年前、苦しめられたのがシンカーだった。開幕ローテを手中に収めかけるも、直前で失意の2軍落ち。プロで勝負する上で、空振りの取れる球を追い求め、シンカーに磨きをかけたが、本来の投球フォームを見失った。「曲げようとか、落とそうとかしすぎて、体が突っ込んだり、開いたりしてしまって…」。一時的にシンカーを封印することを決めた。

 昨季は主に中継ぎで6勝(無敗)をマークし、再び巡ってきたのは先発のチャンス。再転向に向け、シンカーへの挑戦は必然だった。試行錯誤を重ね、道筋が見えたのが、3月19日の巨人とのオープン戦。6回途中5失点と乱れたが、シンカーの感覚をつかむ瞬間があった。「直球と同じ腕の振り、フォームを意識して投げてみたんです。投げた時に、あっこの感じだって思った」と振り返る。

 豪快な腕の振りから繰り出されたシンカーは、130キロ後半をマーク。直球との球速差が少なく、腕の緩みが消えたウイニングショットは抜群の威力を発揮した。この日投じた139球中、26球がシンカー。中田、アブレイユら右打者にも6球使った。父親の剛さんの誕生日を、プロ初完封勝利で飾った右腕は「疲れたの一言に尽きます」と心地よい疲労感に包まれた。【久保賢吾】