広島前田智徳外野手兼打撃コーチ補佐(41)が23日ヤクルト戦(神宮)の8回、代打で死球を受け、都内の病院で「左尺骨骨折」と診断された。近日中に再検査を受けるが、手術する可能性があり、長期離脱は避けられない状況となった。エース前田健、4番エルドレッドに続き、代打の切り札まで離脱。負の連鎖が止まらない。

 窮地に立たされた。広島前田智の長期離脱は避けられなくなった。試合中に直行した都内の病院でエックス線検査を受け「左尺骨骨折」と診断された。怒りをあらわにしたのは、左手の状態が分かっていたからなのかもしれない。

 同点に追いついた8回2死一、二塁。打率4割4分4厘を誇る切り札の登場に、球場のボルテージは最高潮に達していた。マウンドには広島出身のルーキー江村。その5球目だった。直球が左手首を直撃。すると、顔をしかめながら江村に歩み寄り早口で怒りをぶちまけた。直後に両軍が入り乱れ、ヤクルト荒木投手コーチの胸ぐらをつかんだ古沢投手コーチが退場となる騒動となった。その間も左手を押さえたままだった前田智は病院へ直行。「相当痛がっていた。やばいかもしれない」と話した野村監督の悪い予感は的中した。

 早期復帰に向け、手術を選択する可能性が出てきた。西武栗山が昨年8月21日ソフトバンク戦で死球を受け、同じように左尺骨を骨折。手術を受け、11月12日にフリー打撃を再開した。栗山の場合オフ期間に入っているため単純比較はできないが、実戦復帰までには最短でも2カ月を要する見込み。再検査の結果を受けて、最終的な判断を下す見込みだ。

 チームは災難続きだ。エース前田健が「右上腕三頭筋筋膜炎」、昨季の新人王野村が「右肩関節唇損傷」、4番エルドレッドは「右第5中手骨骨折」で戦線を離脱している。その中で、代打の切り札の不在は大きな痛手。かつてはアキレスけん断裂から復活した男に、再び試練が降りかかった。【鎌田真一郎】