<DeNA2-4西武>◇28日◇横浜

 野手転向3打席目での1発だ。7年目の西武木村文紀外野手(24)が、プロ初本塁打。1-1の8回、代打でDeNA三浦から左翼席へ運んだソロが決勝弾となった。投手では6年で1勝しかできず、昨年9月に野手に転向。2軍戦で日本ハム大谷から場外弾を含む2本塁打を放って、緊急昇格。最速152キロに別れを告げた06年高校生ドラフト1位右腕が、持ち替えたバットで結果を出した。

 本格的な打撃練習から6年も離れていたスイングにはとても見えない。「打席に入る前、片岡さんに変化球を狙うように言われて、イメージ通り打てました」と三浦のスライダーを打ち抜いた。野手転向して1年もたたずに助言を実行できる技術も木村にはあった。プロ3打席目での初アーチが決勝弾。「うれしさと、ちょっとビックリ。(ベースを踏んだか守備に確認され)打球を見すぎてしまって。恥ずかしい」と初々しさいっぱいに笑った。

 昨年9月、最速152キロの投手に別れを告げた。プロ通算41試合で1勝4敗、防御率5・60。限界を感じ、高校通算33発のバットに持ち替えた。渡辺監督が現役時代につけた背番号41を、51番に代えて再出発。17日に2軍で日本ハム大谷から2発を放ち、1軍から呼ばれた。好投していた菊池の代打で結果を出し「雄星に勝ちがついてよかった。昨年までブルペンで一緒に投げてたんで、変な感じもします」。2年前にはともにオーストラリアに派遣され、1カ月も一緒に生活した後輩の力投にこたえた。

 野手転向で成功した大先輩にアドバイスを求めた。宮地2軍守備走塁コーチ、広島から移籍した嶋に話を聞き「手の皮が裂けるくらい振ったと言ってました。それくらいやらないといけない」と決意。オフに引っ越したマンションは、広さが6畳以上あるバルコニー付きを選んだ。素振り部屋ならぬ“素振りバルコニー”で、必死でバットを振り続けた。「目標は右の糸井さん」という笑顔の裏には、血のにじむような努力があった。【柴田猛夫】

 ◆主な1勝&本塁打

 11年に投手として1勝を挙げ、野手に転向した木村が初本塁打。投手で白星を挙げた後に野手に転向して本塁打を打った選手は、最近では石井琢(広島=1勝&102本塁打)三浦貴(西武=3勝&1本塁打)宮出(ヤクルト=6勝&39本塁打)雄平(ヤクルト=18勝&3本塁打。1本は投手時代)らがいる。