<西武3-7巨人>◇3日◇西武ドーム

 真打ちのアベック本塁打で、巨人が一夜にして首位を奪還した。阿部慎之助捕手(34)が3回に14号ソロ。5回には村田修一内野手(32)が8号2ランを放ち、5連勝中の西武を突き放した。主力のアーチに引っ張られ、先発全員安打の完勝。相手先発の菊池を今季最短でKOし、連敗を5で止め定位置に返り咲いた。

 阿部、村田が眠れる巨人を起こした。口火を切ったのは主将阿部だった。初回に8戦ぶり先制点の犠飛。そして3回。試合前まで両リーグ1位の防御率1・14を誇っていた菊池のインハイ直球を粉砕した。覚醒を象徴するような弾丸ライナーを右翼席へ。14号ソロに「うまく、さばけた。力感なく振れた」と納得した。

 前日2日の西武戦に敗れ、今季初の5連敗を喫して首位から陥落。試合後に緊急ミーティングが開かれ、重苦しい雰囲気が流れた。その夜、すべてを振り切るように阿部は振る舞った。焼き肉店で「腹が減っては戦はできない。腹がちぎれるほど、肉を食うぞ!」と豪快に宣言。ロース、ハラミを胃袋に流し込んだ。周りが満腹になる中、最後に「大ライス!」と元気良く注文。「ヤンキースも5連敗することはある」。敗戦の責任を感じながらも、気持ちを一新した。

 飢えた村田も1発をぶっ放した。5回2死一塁。滞空時間の長い放物線をレフトへ描いた。13戦ぶりの8号2ラン。「長打を狙える場面だったので思い切って行った」。ベンチに戻ってきた村田は目を見開いて喜ぶ原監督とグータッチ。5月26日のオリックス戦で失策と三振を犯し、初回で交代させられた。翌日の練習。ジャイアンツ球場に到着した村田はサングラスをかけ「スッキリしないです」とボソッとつぶやいた。

 だが悔しい思いは野球でしか晴らせない。その後、阿部と食事に出かけて励まされた。その様子を見た阿部も「修一は大丈夫だ」と感じた。前日の5連敗後も村田は「みんなで、もがくしかない。去年も出足は悪かったけど、みんなでもがいて抜け出した」と決意は強かった。

 5月17日の西武戦以来となる今季4度目のアベック弾が連敗脱出、そして一夜での首位奪還をもたらした。原監督は1番に中井を抜てきし、カンフル剤を打った。枢軸の男たちは感じている。「(メッセージだと)そう思わないといけない」(阿部)「若い者にまだ負けられない気持ちがある」(村田)。2人が強き巨人の姿を取り戻した。【広重竜太郎】