<西武10-0中日>◇12日◇西武ドーム

 西武菊池雄星投手(21)があとアウト2つで、ノーヒットノーランを逃した。本拠地の中日戦で、6回途中までパーフェクト。許した走者は四球、失策による2人だけとほぼ完璧だったが、9回1死から大島に中前打を打たれた。チームでは渡辺久信監督(47)が96年に記録して以来の快挙はならなかったが、1安打完封8奪三振で7勝目。3完封、防御率1・41は両リーグトップで、チームの連敗を5で止めた。

 菊池の投げたボールは飛ばなかった。外野への打球は4度。フライが3つ、そして9回1死から大島に許した中前打だけだった。打者有利に変更されていた統一球の影響に「自分はあまり感じない。いい球がいけば抑えられるし、甘いところはホームランにされる」と潔い。“飛ぶボール”になって防御率1・41は、今年になって大化けした21歳左腕の実力を示すものだ。

 5回に最速150キロ、最終回も148キロをマークした直球で押した。余分な力が抜け、かつ躍動感のあるフォームから球威が最後まで落ちない。昨年までは自分との闘いだった。理想のフォームが固まらずに悩んでいたが「今年のハワイ自主トレで石井さん、岸さんに『気持ちいいところで投げれば、いい球がいくんじゃない。それでプロに入ったんだから。フォームを考えずに投げれば』と言われて、吹っ切れました」。

 先輩のアドバイスで、迷いがなくなった。それでも無安打がかかった9回は「野球をやってて初めてマウンドにいくのが怖いと感じた」と足が震えた。大島には128球目、真ん中の145キロ直球を痛打され「力が抜けました。悔しかったです」とマウンドに片膝をついたが、投球は崩れない。後続2人を打ちとり、両リーグ最多3度目の完封を完成させた。

 「あとアウト2つ」の壁に阻まれたのは3度目になる。花巻東3年時、センバツ1回戦鵡川戦で許した初安打、プロ初完封目前だった2年前の楽天戦で山崎(現中日)に通算400号を献上したのも、9回1死からだった。その山崎と、四球で初めての走者を許した6回1死で対戦し「最初にこてんぱんにやっつけられた大先輩。認めてもらいたい気持ちもあった」。当時打たれたチェンジアップで勝負し、空振り三振。2年分の成長を見せつけた。

 記録は逃したが、自信はさらに膨らんだ。「置きにいったボールじゃないし、相手が上だった。まだ自分には早いということ」と笑顔で話した。才能を開花させた左腕には、いつでも快挙をやってのけそうな雰囲気がある。【柴田猛夫】

 ▼菊池が9回1死から打たれた大島の1安打に抑え、自身初の1安打完封勝ち。00年以降、9回以降に初安打を許して無安打を逃したのは15度目で、そのうち西武の投手が00年6月30日松坂(9回無死)02年8月26日西口(9回2死)05年5月13日西口(9回2死)05年8月27日西口(10回無死)10年5月7日涌井(9回無死)13年6月12日菊池(9回1死)と最多の6度。西武のノーヒットノーランは渡辺監督が96年6月11日に達成して以来誕生していないが、惜しいところまでいった投手は多い。