統一球を秘密裏に飛びやすく変更していた問題で、日本野球機構(NPB)は14日、東京・内幸町の事務局で臨時の12球団代表者会議を開催し、第三者機関を設置して調査することを決めた。会議終了後に会見した加藤良三コミッショナー(71)は「迷惑をかけたことは大失態だった」と、ファンや選手に謝罪したが、自身の辞任については、重ねて否定した。今後は第三者機関の調査結果を踏まえ、7月10日のオーナー会議で、責任問題を追及される可能性がある。

 ようやく反省の態度を示した。問題発覚以来、2度目の会見。加藤コミッショナーは、肩をすぼめ、消え入りそうな声で反省の言葉を並べた。「ファン、選手の方々に迷惑をおかけしたことについては大変な失態であったと思い、猛省しております」。顔を真っ赤にして気色ばみ「不祥事ではない」と開き直った12日の会見後、NPBの電話は苦情で“パンク状態”になった。抗議メールはトータルで5000件を超えた。事の重大さに気が付き、観念したのだろう。

 加藤コミッショナーは直前に行われた12球団代表者会議でも、事情を説明し、騒動について謝罪した。ただ、統一球変更は下田事務局長の独断で「私はまったく知らなかった」という主張は崩さなかった。自身の辞任についても否定した。関係者によれば、会議に出席した代表者から「本当に知らなかったのか?」と質問が出たが「本当に知らなかった」の一点張り。自身の関与については否定し続けたという。

 NPBが12日に発表した事実関係は、当事者の一方的な言い分にすぎない。12球団の代表者は、これではファンを納得させられないと判断。真相究明は公平で中立な第三者機関に委ねることを提案し、全会一致で委員会の設置を決めた。責任追及よりも先に、本当に加藤コミッショナーの関与はなかったのか、組織ぐるみのものではなかったかを確認する。加藤コミッショナーは「NPB内の人間で反省しても足りない。12球団全体で対応してもまだ足りないところがあるかもしれない。第三者の視点で、より広い視点でこの事案を見つめてもらおうということ」と、受け入れた。

 第三者機関では統一球問題の事実関係のほか、NPBの組織としてのガバナンスの問題点を洗い出す。加藤コミッショナーがトップとしてふさわしくないと判断されれば、進退問題に及ぶ可能性もある。加藤コミッショナーは「私自身の問題について、第三者から意見が出れば、当然ながら留意すべきところ」と話した。コミッショナーの任命はオーナー会議でしか決められない。7月10日のオーナー会議で、責任問題を追及される可能性がある。

 今後はどんな形で第三者機関を設立し、どんなメンバーで構成するかが注目される。パ・リーグ理事長を務めるオリックス村山球団本部長は「メンバー選定は弁護士などと相談して、なるべく早く対応していきたい」と話した。【広瀬雷太】

 ◆第三者機関

 企業などが責任説明を果たし、透明性確保のために設置する組織で調査や提言などを行う。野球では98年にパ・リーグが、ダイエーのスパイ行為疑惑の解明のため「パ・リーグ特別調査委員会」を設置。「疑惑の存在をうかがわせる心証は得られた」と最終報告書をまとめた。07年には西武がアマチュア選手への裏金問題で調査委員会を設置。同年、日本高野連は「特待生問題有識者会議」を設置し「各学年5人以下などの条件付きで容認するのが相当」との意見をまとめた。日本相撲協会は10年に「ガバナンスの整備に関する独立委員会」を設置。全日本柔道連盟は今年、女子選手への暴力問題と指導者の助成金不正受給の問題で第三者委員会を設置。