<西武1-10楽天>◇27日◇県営大宮

 守備の人がバットで魅せた。楽天岩崎達郎内野手(28)がプロ初の3安打猛打賞を記録した。2-0の2回先頭で、西武涌井から左翼線二塁打を放ち追加点につなげると、6-1の9回1死満塁では走者一掃の中越え二塁打でダメを押した。オープン戦期間中の3月に中日からトレード移籍。新天地で貴重な戦力となっている。

 小気味良い音を立て、岩崎の打球は中堅深く飛んでいった。9回1死満塁。西武岡本洋の初球144キロを捉えた。前打者の嶋は四球だった。塁が埋まり、相手はストライク先行でいきたい場面。バッテリーの心理を読み「初球から打っていこうと思いました。芯に当たりましたね」と、してやったりだった。

 2回には涌井から二塁打。8回には山本から左前打を放ち、プロ初の3安打猛打賞だ。交流戦後に限れば、17打数7安打の打率4割1分2厘と打ちまくっている。交流戦終了時点の打率は5分3厘で、1割を切っていた。突然の目覚めに、岩崎本人も「自分でも分からないですね」と首をかしげた。ただ、パ・リーグに移籍して分かったことがあるという。「パはパワーピッチャーが多いですね。どんどん、直球を投げてくる」と、セとパの違いを痛感。初球の真っすぐを振り抜けたのも、経験から学んだ成果かもしれない。

 正遊撃手の松井に代わり、4試合連続でスタメン出場中だ。星野監督は「岩崎は、この西武3連戦、よくやってくれた」と手放しで褒めた。3月に中日から金銭トレードで加入した。トップクラスの守備力を楽天がほれ込み、移籍が実現した経緯がある。若手の遊撃手西田は腰を痛め、2軍でリハビリ中。2年目の三好は、まだ1軍で戦えるメドは付いていない。松井が本調子でない今、岩崎がいなければ…。貴重な戦力となった。

 バットでも存在感を見せたが、岩崎は「とにかく守備から入ること。守備でリズムをつかもうと思っています」と、変わらないスタイルを口にした。そんな謙虚な姿勢が、さらに信頼を生むはずだ。【古川真弥】

 ◆岩崎達郎(いわさき・たつろう)1984年(昭59)12月28日生まれ。神奈川・横浜出身。横浜商大高、JX-ENEOSを経て、06年大学・社会人ドラフト5巡目で中日入団。俊足と守備力を買われ、10年には自己最多78試合に出場。今年3月、金銭トレードで楽天に移籍した。175センチ、75キロ。右投げ右打ち。推定年俸1550万円。