巨人渡辺恒雄球団会長(87)が次期コミッショナーにソフトバンク王貞治球団会長(73)を“指名”した。1日、都内のホテルで取材に応じ、労組プロ野球選手会が統一球の秘密裏の変更などを問題視して加藤良三コミッショナーの退任を要望したことに「次はもう1人しかいない。世界のヒーローを迎えるのが一番いい」と発言。加藤コミッショナーの来年7月の任期満了までの続投を支持しつつも、王会長を後継候補に挙げた。

 渡辺会長の頭の中では、次期コミッショナーはもう決まっていた。選手会が加藤コミッショナー退任と次期コミッショナーの理想像をNPBに対して要望した件について聞かれると「もう、いるじゃないか」と間髪入れずに答えた。一瞬、虚を突かれた報道陣が「世界の…ですか?」と聞くと後継候補への“応援演説”は止まらなかった。

 渡辺会長

 人格、識見、人柄とこれ以上の人はいないという人が1人いるじゃないか。君らなら誰もが知っている。国民栄誉賞の(王氏)?

 そういうこったよ。あの人のコミッショナーをつくりたい。オレはもう。野球界がきれいになるんじゃないか。

 来夏のオーナー会議まで任期が残る加藤コミッショナーに対しては、続投を支持した。「今の任期中に辞めさせるのは失礼。こっちが頼んだんだから」。今、NPBが抱える問題を現体制である程度、解決してから、バトンタッチを狙う。「任期までやってもらって、その間に次の人に準備をしてもらわないといけない。次の人に全部嫌なことを解決してもらうのは失礼だよ」とも話した。

 王氏への打診については「本人とはしていない」と否定しつつも、本人に限定した言葉に周囲には構想を伝えている可能性をにおわせた。王氏は7年前に胃がんを患い、健康面には不安があるが、そのことにも配慮した。「あの人もご健康じゃない。なるべく事務的なことでつまんない苦労をさせないように、我々が守ってあげないと」と万全のサポート体制を敷く構えだ。

 帰宅の車に乗り込む前に、「王コミッショナー」誕生への野望を口にした。「野球界をきれいにして、極めて合理的なものにして、世界のヒーローを迎える。それが一番いいんじゃないかね」。最後まで冗舌に人事構想を披露した。<コミッショナーの“進退”めぐる関係者の発言>

 ◆擁護

 6月26日、巨人渡辺球団会長が都内で、NPBが秘密裏に統一球の仕様を変更した問題について初めて言及。「コミッショナーに責任はない。じゃあ、大臣が1人不祥事で首になったら、総理大臣辞めるってことになるか?

 ならんだろ」と、加藤コミッショナーを擁護。

 ◆要求

 同27日、労組プロ野球選手会の松原事務局長が、NPB事務局を訪れて統一球問題に関する要望書を提出。文書の中で、コミッショナーを「プロ野球の将来について消極的で責任回避的な人物」とし、新コミッショナーのもとで組織構造改革に取り組むべきと指摘。コミッショナーは「ビジョンと責任感を持った、強いリーダーシップを発揮できる人物」が理想とした。