<西武4-5ソフトバンク>◇9日◇西武ドーム

 ソフトバンクが逆転勝ちで連敗を止めた。負ければ借金生活突入の危機を救ったのは、今季の西武戦初出場の中村晃外野手(23)だ。同点の7回、2死三塁から値千金の決勝打。子供のころに大ファンだった西武の連勝を5で止めた。投手陣は5人の継投で、最後は五十嵐が移籍後初セーブで締めた。日本ハムを抜いて3日ぶりに4位浮上。さあ、再出発だ。

 西武ドームでヒーローインタビューを受けている中村の顔は、誇らしげだった。「前の打席のチャンスに消極的な凡打をしてしまった。何としてもピッチャーを助けたいと思って打った」。子供のころ、この球場のスタンドから、憧れのプロ野球選手に声援を送っていた。そして今、自分がそういう立場になった。歓声が、心地よかった。

 大仕事は同点で迎えた7回、2死三塁だ。西武牧田に狙い球を外されたが、とっさにバットをコントロール。「真っすぐを狙って、うまく変化球に対応できた」。勝ち越し打が右前で弾んだ。7月の月間打率は3割7分9厘と、長谷川、内川、松田ら好打者を上回ってチームトップ。交流戦後は一時調子を落としたが、再び状態を上げてきた。

 埼玉・朝霞市生まれ。昔は大の西武ファンだった。「小学生の時は家から片道1時間くらいかけて、親と一緒によく球場に見に行ってました」。好きな選手は松井稼頭央(現楽天)。当時、主に1番としてレオ打線を引っ張る松井に、中村少年の目はくぎ付けとなった。

 そして今季、中村は5月下旬から1番に定着。「松井さんは自分とタイプは違うけど、憧れ、理想ですね。いい場面で打てる選手になりたい」と話していた。この日、応援に訪れた母親の前で見事な決勝打。今季初めて出場した西武戦では、どうしても打ちたかった。昨年も西武戦は9打数3安打と、対戦球団の中で最も良く打った。

 1回に奪った3点を逆転されたが、追いつき、再逆転して連敗脱出。5月29日巨人戦以来の1点差勝利に、秋山監督は「勝つことが大きいよ」とうなずいた。殊勲の中村には「自分のスタイルで打てているね」と手放しのほめようだ。

 帝京では2年夏から4番を打った才能が、プロ6年目で開花した。「試合に出て、野球ができる幸せを感じながらやっている」。これからも不動のトップバッターとして、好調な打線を支える。【大池和幸】