<巨人4-1ヤクルト>◇30日◇東京ドーム

 原巨人にまた平成生まれの新星が登場した。約3カ月ぶりに1軍昇格した橋本到外野手(23)が2番右翼で出場し、攻守に大車輪の活躍。3回の守備はレーザービームで補殺を決め、直後の攻撃では左翼フェンス直撃の二塁打で村田の逆転打へとつなげた。5打席中、2安打を含む4度の出塁で全得点に絡み、4連勝に貢献。レギュラーに定着した23歳の中井に続く若武者の活躍で、巨人の首位快走が止まらない。

 172センチの小柄な肉体に剛腕が宿っていた。3回無死一、二塁。ヤクルト山田の飛球はライトほぼ定位置。軽やかな助走をつけた橋本は視線の先に二塁走者の川島を捉える。「(タッチアップで)走ったら見せ場だ」。遠投120メートル、登録体重の72キロより3キロ増の肉厚な体に組み込まれた右肩を回す。うなりを上げた送球はワンバウンドで三塁村田のグラブへ。川島はスライディング体勢に入ったばかりで悠々、アウトだ。「誰にも負けない」という自慢の肩で危機を回避した。

 プロ5年目。才能は誰もが認める。だが昨季は1軍出場がなく、通算でも35試合。巨大戦力の中で埋没した。最大の壁は緊張。前回昇格した4月下旬の朝にはジャイアンツ球場でスパイクを磨いていた。「普段は磨かないんですけどね。緊張しているのかな?」。5戦連続でスタメン出場するなどチャンスを与えられたが、2安打で1割にも満たない打率で降格した。

 弱点と向き合った。6月中旬。福島県の小学校を訪問した時に、質問コーナーで本音を吐露した。「1軍の舞台で大観衆の前で試合をする時に、どうしても緊張してしまう。いかに普段通り、プレーできるか。これが難しいんだ」。実戦では清水2軍打撃コーチに「1軍の感覚ならどうですか?」と聞きながら臨んだ。左投手からの同じ三振でも「相手に、ほんろうされないように」と空振りの姿にもこだわった。1軍を想定してイースタン・リーグで3割4分8厘の成績を残し、ついに1軍に呼ばれた。

 成果は打席で表れた。3回、逆らわない打撃で左翼フェンス直撃の二塁打を放ち、村田の逆転打につなげた。5回の内野安打、6回の四球と全得点に絡んだ。「ダメで、もともと。どうせ2軍に行くなら、自分のやりたいようにやる」と開き直って結果を出した。

 1年先輩の中井の活躍を2軍で見ていた。「同世代の活躍している姿を見ていると悔しかった」。だが肩を並べる時が来た。「後半戦は総力戦で若い力が必要になると思う。その中で僕が1つの大きな力になりたい」。今日31日は左腕八木が相手で相性が良く先発濃厚だ。ヤクルトとの残り2戦の先発は笠原、小山と若武者が担う。巨人には若き才能があふれている。【広重竜太郎】

 ◆橋本到(はしもと・いたる)1990年(平2)4月28日、秋田市生まれ。小学1年で仙台市へ移る。仙台育英では1年春からベンチ入りし、甲子園に3度出場。高校通算12本塁打。08年ドラフト4巡目で巨人入団。10年インターコンチネンタル杯(台湾)で日本代表。172センチ、72キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸950万円。背番号32。独身。