お帰り!

 中日からFA宣言した中田賢一投手(31)のソフトバンク入りが28日、決定した。中日と阪神、ヤクルトによる争奪戦だったが、球団納会の直前に中田賢から電話で入団の意思が伝えられた。年俸は変動制の4年契約で最大6億円プラス毎年の出来高払い、「帰ってきてほしい!」の口説き文句で、北九州市出身の61勝右腕の獲得に成功した。入団会見は来月6日以降となる見込みだ。

 クリスマスパーティーを兼ねた家族参加の球団納会の直前にプレゼントが舞い込んだ。交渉した小川編成・育成部長の携帯電話に中田賢からコール。球団事務所から姿をみせた王球団会長は「いい答えが来たみたいだね。現時点で投手陣の層からすると、ほしいところではあったから」と上機嫌だった。交渉解禁日となった15日の速攻アタックから2週間。ついに待望の右腕のソフトバンク入団が決定した。

 中日と阪神、ヤクルトとの争奪戦。交渉にあたった小川部長は9年前、スカウト部長として当時北九州市立大の中田賢を見守っていた。その縁もあって「帰ってきてほしい!」と心揺さぶる決めゼリフで“帰郷”を促していた。当初から「ファンのみなさんもすごく温かく応援されている。優勝争いも毎年している」と中田賢のハートを射抜いていたようで、福岡の住環境などの良さを丁寧にアピールしたことも奏功した。

 今季は4勝6敗。中盤から救援に配置転換され、15ホールドも記録した。もちろんソフトバンクは先発ローテーションの軸として期待。提示条件は4年契約で、最低3億円~最高6億円まで変動する成果報酬型の総年俸に加え、登板イニング数などに応じた出来高払いが毎年つく、手厚い内容だったと推測される。初交渉を終えた際、中田賢は「来てほしいという気持ちを感じた。すごくいい評価をしていただいた。頑張れば頑張っただけ評価してもらえる金額を提示していただいた」と話していた。

 広島からFAの大竹は巨人入りして獲得を逃したが、課題である先発投手の補強に成功。小林海外兼中長期戦略担当部長は「ホッとひと安心。心強い投手が入ってくれる。根性があるし、うちの競争をあおってくれるし、大きな戦力になる」と話し、伝え聞いた秋山監督も「力になってくれるでしょう」と歓迎した。

 既に中継ぎ左腕として岡島の復帰が決まっている。新たにFA補強で中田賢を加え、さらに先発陣では阪神を退団するスタンリッジと日本ハムを退団するウルフ、オリオールズ退団でFAとなった和田らがターゲットになっている。V奪回へなりふり構わない大型補強を予告しているソフトバンクは攻めの手を緩めない。【押谷謙爾】

 ◆中田賢一(なかた・けんいち)1982年(昭57)5月11日、北九州市生まれ。八幡-北九大を経て04年ドラフト2巡目で中日入団。07年に14勝をマークするなどローテーション投手として活躍。今シーズン中盤は救援に回り15ホールドを記録。通算186試合61勝51敗、防御率3・57。推定年俸7000万円。180センチ、78キロ。右投げ右打ち。