寒く薄暗い雪道から新たな野球人生が始まる。中日に新加入した元ロッテ工藤隆人外野手(32)が16日、独自のトレーニング方法を明かした。名古屋への引っ越しを終え、この日ナゴヤ球場を訪れた工藤は「雪の上を走るんです。除雪車のうしろなんかはいいです。普通の人ならこける」と独自の練習法を披露。12球団合同トライアウトで落合GMに見いだされた男は、オフの過ごし方もひと味違った。

 青森・黒石市出身の工藤は年末に帰省すると、雪の上を1時間近く走ることが日課になる。目的は体力維持だけではない。「バランスを取りながら走るのでいい体幹トレになるんです。滑らないように歩幅は小さく、ですね」。雪の上を走ることで体の使い方をより意識する。何よりも精神力が鍛えられる。

 家を出るのは、まだ日が明け切っていない午前5時から6時の間。青森の1月平均気温は氷点下だが「慣れてるんで大丈夫です」と口調は熱い。顔面には吹雪がぶち当たり、耳もちぎれそうになるマイナスの世界。靴に染みこむ雪の冷たさを我慢し、黙々と走るという。

 競馬通としても知られる工藤。16日付の日刊スポーツ1面を見ながら有馬記念に出走する競走馬に自分を例えるなら?

 と聞かれ、苦笑い。日本ハム、巨人、ロッテ、さらに中日と偶然にも落合GMと同じ4球団でプレーすることになった苦労人は「有馬に出る馬はスターばかりですから。僕なんて全然です」と謙虚に話した。スポットライトを浴びるスター街道とは無縁。粘り強く、忍耐強い東北人は、雪道を1歩、1歩踏みしめる。【桝井聡】

 ◆工藤隆人(くどう・たかひと)1981年(昭56)3月30日、青森県黒石市生まれ。弘前実1年時に夏の甲子園出場。青森大、JR東日本を経て04年ドラフト9巡目で日本ハム入団。08年オフに巨人、11年6月にロッテにトレード移籍。今オフ、戦力外通告を受けトライアウトを経て入団。171センチ、73キロ。左投げ左打ち。来季推定年俸1000万円。背番号62。