今季のプロ野球公式戦で使用されている統一球の反発係数が規定を上回り飛びやすくなっていた問題で、熊崎勝彦コミッショナー(72)が11日、東京都内の日本野球機構(NPB)で会見し、騒動について謝罪した。製造するミズノ社による原因調査、第三者機関の再検査の結果を待って、今後の対応を決める方針だ。ただ、“違反球”であることが確認されても、代替球がないため、当面は現行のボールを使用するとした。

 NPBの執務室で会見した熊崎コミッショナーは神妙に頭を下げた。「お騒がせして誠に申し訳ない。(製造するミズノ社だけではなく)NPBにも管理者側として品質管理の責任がある」。昨年、統一球問題が世間を騒がせたこともあり「寝ても覚めても統一球は大丈夫かという気持ちでいた」と言う。開幕前の3月19日、NPBが非公式に検査を行い、規定内に収まる数値(0・421)を示していたことも明らかにした。それだけに、前日判明した今季第1回の検査結果には「ちょっとびっくりしました」と困惑を隠さなかった。

 まずは、徹底的な原因究明に努めると同時に、第三者機関による再検査を見守ることになる。今月中には結果が判明する見込みだ。しかし、アグリーメントに違反するボールであることがあらためて確認されたとしても、代替球がなく、現行の球を継続して使用せざるを得ない。統一球の製造は手作業で、熟練の職人が1時間に4個しか作れないという。熊崎コミッショナーは「(在庫の)1万数千ダースのボールを使っていくしかない」と話した。

 熊崎コミッショナーは「(品質管理に)ものすごい神経を使ってきたことは事実だが、これでは不十分だということに今回気付きました」と、抜き打ち検査の実施時期や回数の見直しを示唆した。これまでシーズン中だけだった検査を、オープン戦期間中にも行うことを検討。開幕前に結果を公表すれば、今回のように規定をオーバーしていた場合でも現場の混乱は最小限にとどめることができる。12球団の代表者が集まる14日の理事会で議論される予定だ。

 NPBは16年の公式戦で使用する統一球の製造メーカーを、複数の企業を競い合わせて決定する方針を固めている。熊崎コミッショナーは「今回の件とは関係なく既に決まっていたことだが、オープンコンペになるのは、大変いいことだと思う」と期待した。今回の問題を機に、さらに統一球の品質向上に対する意識を高める。【広瀬雷太】