ウールの乾燥が飛びすぎの要因!?

 今季のプロ野球公式戦で使用されている統一球の反発係数が規定を上回り飛びやすくなっていた問題で、日本野球機構(NPB)は14日、ボールを製造するミズノ社から原因について中間報告を受けた。この日都内で開かれたNPBの臨時理事会に同社の水野明人代表取締役社長らが出席し、12球団の代表者に騒動について謝罪。現時点で考えられる反発係数が上がった要因の1つとして、ボール内部のゴム芯を巻くウール糸の含水率が通常よりも低かったことが報告された。

 NPB事務局に、ボールを製造するミズノの幹部が事情説明に訪れた。水野社長は熊崎コミッショナーと会談した後で、臨時理事会に出席。会の冒頭で、12球団の代表者に統一球の騒動について陳謝するとともに、社内調査の中間報告を行った。

 統一球はミズノが中国・上海に構える工場で生産されている。同社は「ボールの素材は昨年までのものと一切変わっていない。仕様は同じ」と、製造工程や素材に変更はなかったと説明。納品前に独自で行った反発係数測定でも、数値は規定の範囲内に収まっていたことを強調した。

 現時点で原因の特定には至っていないものの、素材の管理に何らかの問題があった可能性が報告された。ボール内部のゴム芯を巻く毛糸(ウール)の「含水率」を調べたところ、通常よりも水分量が低く、乾燥した状態であったことが判明。工場内で保管している際に、ウールの品質が変化した可能性があるという。同社は今日15日に記者会見を開き、調査の詳細を公表する予定だ。

 NPBはミズノに対し、引き続き原因の特定作業を進めるとともに、基準に合ったボールを安定的に供給することを要望した。しかし、現実的には原因が特定されるまで新たなボールの製造に取りかかることはできない。ミズノは一時的な措置として、約1万ダースの統一球の在庫から基準に適合するボールを集めて出荷する方針を伝えた。いずれにしても、基準内のボールを供給するには一定の期間が必要。熊崎コミッショナーは、当面は“飛びすぎるボール”を継続して使用することを決定し、12球団の了承も得た。

 NPBをはじめ関係各所は、現場の選手やファンを混乱させないよう、今後も新たな動きがあれば随時、情報公開する方針。反発係数の測定を委託されている日本車両検査協会も、近日中に検査方法をメディアに公開する予定だ。

 今回の問題は、仕様の変更を秘密裏に進めた昨年の統一球問題とはまったく種類が異なるものだ。素材の乾燥と断定されたわけではないが、これまで原因が謎に包まれていただけに、大きな前進と言える。ボールは繊細な“生き物”であることをあらためて肝に銘じ、球界全体で品質管理の強化に取り組むことが求められる。【広瀬雷太】

 ◆飛ぶボール問題

 13年6月11日、NPBが統一球の仕様を公表しないまま「飛ぶボール」に変更していたことが明らかなった。同14日に公表された過去の反発係数では11、12年に比べ13年の方が飛びやすいことが数値で証明された。今季の反発係数の基準範囲は0・4034~0・4234。NPBは10日、3月29日の反発係数検査で6球場の平均値が0・426、規定の上限0・4234を5球場で上回り、飛びやすくなっていると発表。原因は統一球を製造するミズノ社が調査中。当面は現在のボールを継続して使用する。

 ◆ボール反発係数測定

 東京都内の日本車両検査協会に委託して毎年3~5回行い、1度の検査で6球場の備品から1ダースずつ抽出した計6ダース(72球)を調べる。6種類の速度で鉄の壁に球をぶつけ、はね返ってくる速度を計測。検査対象となる球場は、NPBの担当者が抽出する当日に通告する。