<西武2-3ロッテ>◇15日◇県営大宮

 あんなものじゃない!!

 ロッテ涌井秀章投手(27)が、古巣西武を相手に移籍初勝利を挙げた。7回を投げて5安打2失点。最後まで球威が衰えることなく、移籍後最速の147キロもマークした。開幕から2戦は勝ち星なく、初登板の際は「涌井はあんなもの」と酷評される一幕もあった。この日の好投はチームの連敗も止める大きな1勝。12球団勝利の記録も手にした。

 右翼スタンドのロッテファンへ、勝利のあいさつを済ませると、涌井の顔にようやく笑みがこぼれた。「素直にうれしいです。いつも通り、自分の投球をしようと自信を持って投げました。チームに勝ちがやっとついたので、一段落ですね」と、安堵(あんど)の表情をみせた。

 古巣との2度目の対決で移籍後初勝利。周囲からは対決色をあおられた。初登板で6回途中3失点した1日西武戦後には、伊原監督から「ここ2年くらいの涌井はあんなもの。5回ぐらいになるとスピードもキレも落ちてくる」と評されたという記事も一部にあった。そんな伏線があったからか、試合後、一緒にカメラのフラッシュを浴びた伊東監督から「ざまあみろ、って言ってやれ」と声をかけられた。それでも苦笑いで返し「巡り合わせっていうんですかね」と、笑顔を浮かべながら振り返った。

 9年間、育ててくれた球団だからこそ、見返したい思いは胸にしまい、闘志を球に乗せた。長年バッテリーを組んできた8番炭谷には直球中心の真っ向勝負。「捕手に打たれるとチームも盛り上がって、リードもさえる。あいつだけには打たせないと、力勝負にいった」。結果は3打席3三振。心は熱く、頭は冷静に、ここ2試合、失点につながっていた下位打線の勘所をしっかり封じ込めた。

 この日の最速は、移籍後MAXの147キロ。中盤以降も力強い投球は変わらず。7回、最後の打者の金子侑に投じた110球目は内角低めへの146キロ。見逃し三振に仕留め、スタミナを疑問視する声も、払拭(ふっしょく)してみせた。

 開幕2連敗も「昔みたいに落ち込むことはなかった」という右腕。1回のマウンドに上がる際は、西武ファンからブーイングも浴びたが、気にするそぶりも見せず、淡々と腕を振り続けた。「(チームからの信頼は)これからですね」という言葉に、“ロッテ涌井”としての確かな手応えがにじんでいた。【佐竹実】

 ▼涌井が古巣西武から初勝利を挙げ、現12球団すべてから白星を記録した。セ、パ12球団となった58年以降、全12球団勝利は13年木佐貫(日本ハム)に次いで13人目。涌井の先発勝利は西武時代の13年4月18日、県営大宮球場のオリックス戦で挙げて以来となり、同球場では通算4勝目。48年からプロ野球で使用する同球場で4勝は最も多い。