<巨人2-7広島>◇16日◇東京ドーム

 いよいよ独走態勢じゃ~!

 広島ドラフト1位の大瀬良大地投手(22)が強力巨人打線を8回2失点に抑え、自身5連勝となる5勝目を挙げた。唯一の黒星を喫した巨人にリベンジし、チームは今季最多タイの貯金12。既に首位での交流戦突入を決めていたが、快勝で2位阪神に今季最大となる4ゲーム差、3位巨人に4・5ゲーム差をつけた。

 大瀬良は試合終了直後も、ケロッとした表情だった。「同じ相手に2回連続で負けるのは嫌だったので」。8回1死で高橋由にこの日最速149キロを記録。8回112球2失点で自身5連勝を飾った直後、まだまだ余力はありそうだった。

 4月9日、巨人相手に7回3失点で初黒星を喫した。試合途中、右手人さし指の爪が割れた影響もあった。「前回は高めを打たれた。低く低く」。丁寧に低めをついた。新助っ人セぺダからは空振り三振2つを奪い、3打数無安打に封じた。ソロ2発こそ浴びたが、得点圏に走者を背負わない投球。「自分らしく強気で攻められた」。幼少期、巨人と松井秀喜氏の大ファンだった男が、決別のG戦初星を手に入れた。

 三塁側ベンチに戻ると、ペットボトルを手に取った。登板7戦中、6戦で7回以上を投球。スタミナの源は3リットルの水分だ。大瀬良は登板中、500ミリリットルのドリンクを6本程度飲み干す。「他の投手と比べて圧倒的に多いと思います」。理由は大学時代までさかのぼる。

 「僕、すごい汗かきで、学生時代は試合中に水分不足で人さし指と中指がつる時があったんです」。ひどい場合は右腕までつるケースもあった。両指がつって開かなくなった時は、グラブの中でフォークの握りをつくって、無理やり両指をこじ開けてから直球を投げた。以来、水分を大量に摂取する。自分の体は隅から隅まで把握している。

 前回8日ヤクルト戦は6回に突如乱れて5失点。翌日、不振で2軍調整中の野村からメールが届いた。「体のどこか痛くない?

 疲れてない?」。キャンプ中から世話になる先輩の優しさが身にしみた。「野村さんからは、この時期と夏場に2回疲れが来ると、教わっていた。気にしてくれていたんだと思う」。それでも「全然問題ないです!」と返せたのは、自分の体をよく知っているからだ。

 通常は休養日となる登板2日後も練習に参加し、前回から休みなしで登板。「ちょっと肘が下がっていた」修正点も難なく解消した。ネット裏にはパドレスなど3球団以上のメジャースカウト勢が陣取っていた。さすがにルーキー目当てではなかっただろうが「オオセラ」の姿は脳裏にインプットされたはずだ。

 チーム最多の5勝目を挙げ、今やエース前田、バリントンと3本柱を形成する立場だ。「(5勝は)野手の皆さんに助けられている。接戦でも勝てる投球をしていきたい」と自覚十分。もう、ルーキーという肩書は必要ない。【佐井陽介】

 ▼大瀬良が4月16日阪神戦から5連勝。広島の新人で5連勝以上は86年長冨8連勝、82年津田7連勝、59年大石5連勝、90年佐々岡5連勝、12年野村5連勝に次いで6人目となり、勝敗なしを挟まない5戦5勝は長冨に次いで2人目。4月24日ヤクルト戦からは神宮→甲子園→神宮→東京ドームと、ビジターで4連勝。今季、敵地4勝は両リーグで大瀬良と井納(DeNA)だけ。敵地で勝つ大瀬良のおかげで、広島はビジターでも両リーグトップの勝率5割7分9厘(11勝8敗)を記録している。