<広島7-1ヤクルト>◇4日◇マツダスタジアム

 広島でエースが投げれば勝つ!

 広島前田健太投手(26)がヤクルト戦で7回9安打1失点と粘投し、ハーラートップに並ぶ8勝目を挙げた。今季はマツダスタジアムで無傷の7連勝。スライド登板をモノともせず、シーズン折り返しの72試合目で存在感を見せつけた。

 打ち取った当たりが何度も「H」ランプに変わる。前田はここで力まず、冷静に要所を締めた。先発9人のうち7人を占めた左打者には、外角に沈んで逃げるチェンジアップを利かせた。大人の投球だった。

 前田

 あまり良くなかった。直球のスピードもあまりなかったし。ランナーを出し過ぎです。

 反省の言葉を並べながらも勝つ。それがエースだ。7回9安打1失点でハーラートップに並ぶ8勝目。今季はマツダスタジアムで無傷の7連勝となった。

 帽子のツバには黒ペンで「人生楽笑」と太く記してある。1歳上の小野、後輩の野村、中田、大瀬良の計4人が漢字1文字ずつ書き込んでくれたモノだ。左脇腹の張りで先発機会を1度飛ばしていた6月中旬、帽子を新調した際に4人から言葉を贈られた。

 前田

 調子が悪かったし流れを変えようと考えて。考え過ぎていた部分があったので、もうちょっと気楽に行こうと思ったんです。

 広島出身で親交のあるアーティストTEEも大切にする造語だ。「自分が勝っていかないと、チームは上位に行けないと思っている」。カープを背負う責任感は誰よりも強いが、力みにつながっては意味がない。

 前日3日巨人戦を雨で流して今季初のスライド先発。「昨日は雨を降らせてすみません。僕が投げる時は折りたたみ傘を持ってきてください!」。自他共に認める雨男は、投球だけでなくお立ち台トークでも肩の力を抜き、笑わせた。

 ヤンキースなどメジャー4球団のスカウト勢が熱視線を送る中、安定感が際立った。防御率は2・16となり、リーグトップ巨人菅野の2・10に肉薄。「求められるところはもっと高い」と満足感はない。目標は圧倒的なパフォーマンスで23年ぶりVに導くこと。シーズン折り返し地点の72試合目を勝利で飾り、絶対的エースがいよいよ全速力で走りだす。【佐井陽介】