<ヤクルト2-3DeNA>◇25日◇神宮

 「いの一番」にキヨシも大喜びだ。DeNA井納翔一投手(28)がリーグ一番乗りで今季10勝目を挙げた。6回を7安打ながら要所を締めて1失点。球団としては4年ぶり、中畑監督就任後は初となる2ケタ勝利投手となった。6回には右足ふくらはぎをつるアクシデントもあったが、粘りの投球でピンチを脱出。チームに後半戦初勝利と、対ヤクルト7連勝をもたらした。

 思わずにやけた。9回2死二、三塁。バレンティンの打球が黒羽根のミットに収まると、井納の顔に笑みがこぼれた。自身ヤクルトには今季5戦5勝で、再びハーラー単独トップに立つ10勝目。「ヒヤヒヤしましたけど、(中継ぎ陣を)信じてました。これからも1球入魂で頑張ります」と力を込めた。

 低めへの投球に集中した。1回から得点圏に走者を背負い続け、3回までに4安打2四球。テンポも悪く、球数も67球を要したが、「とにかく低くという意識」と1失点でしのいだ。6回には2死一、三塁で右足ふくらはぎがつった。それでも「自分でつくったピンチ。責任を負うために、必ず抑える気持ちでした」と続投を直訴。山田を外角低めへのスライダーで打ち取り、リリーフ陣に後を託した。

 胸に刻み続けた言葉がある。プロ初勝利を挙げた昨年5月7日の広島戦後。中畑監督から呼び出されて伝えられたのは、「マエケンになれ」という言葉だった。「能力はある。これからチームの軸へ成長していくために何が必要か。自分の力でつかまないといけない」(中畑監督)。その期待を背負い、井納は2つ年下ながら、球界を代表する広島前田を追い続けてきた。6月27日には、その前田との投げ合いに敗れ、“エース”と呼ばれる男が持つ力に気付かされた。「マエケンはたとえ調子が悪くても、試合をつくる。『こいつが投げれば勝てる』と思ってもらえる投手がエースだと思う。自分はまだまだ隙だらけです」。

 この試合で足がつったことも、「自分の調整不足が原因」。テンポの悪さなど、課題は多い。だからこそ、「1年間投げきったこともない。2年、3年と成績を上げないといけない」と気を引き締めた。

 中畑監督は「けいれんを起こしたけど、最後の1人のアウトを取りに行った。気持ちが強くなった。この1勝で頼もしくなってほしい」とさらなる成長を求めた。そして「エースなんてまだまだ!

 すぐその気になるのやめてよ!」と、くぎを刺した。10勝はあくまで通過点。真価が問われるのはここから。誰もが認めるエースとなるために、井納は腕を振り続ける。【佐竹実】

 ▼井納がセ・リーグ10勝一番乗り

 DeNAでは62、64年秋山、70年平松、78年斉藤明、85年遠藤、93年野村に次いで6人、7度目。野村は湯舟(阪神)と同日到達で、単独では85年遠藤以来29年ぶり。DeNAの10勝投手は10年清水(10勝11敗)以来。11~13年の3年連続10勝投手なしは、98~00年近鉄、02~04年オリックスに次いで2リーグ制後、3球団目のワーストタイ。井納が不名誉な記録の更新を止めた。