<中日4-6DeNA>◇12日◇岐阜

 DeNA久保康友投手(34)が頭脳的な投球でハーラータイに浮上した。中日14回戦に先発し、7回を10安打2失点で10勝目。持ち味の高速クイックを駆使し、最多勝争いでリーグトップの同僚・井納に並んだ。8月に入り、チームは6勝2敗と絶好調。借金を4に減らし、4位中日とは1ゲーム差、3位広島とは3ゲーム差まで縮めた。

 「クイックの魔術師」が持ち味を発揮した。DeNA久保は初回、先頭の大島を安打で出塁を許すと両膝を曲げ、左足で地面を掘った。マウンドの斜面に合わせ前かがみになり、セットポジションから体重移動のないまま投げ込んだ。2番荒木は、0・93秒の高速クイックで中飛に。4回まで毎回、先頭打者を出しながらも、投球術で中日打線を翻弄(ほんろう)した。7回で10安打を浴びながら2失点でしのぎ、リーグ1位タイの10勝。「先頭を出したらダメだけど後ろの打者を打ち取れて良かった」と満足そうに振り返った。

 久保はセットポジションだけでも多様なバリエーションを持つ。状況に応じて間や、足の重心も左右で変える。投球の選択は打者のスイング、姿勢を見て判断する。まさに変幻自在。1失点した直後の4回無死二塁では、クイック頼みではなく球質で勝負。足を高く上げ、ゆったりとしたフォームで平田を投ゴロに料理した。続く藤井には再び0・85秒の高速クイックで二ゴロに打ち取った。

 クイックは始動から捕手のミットに収まるまで、1・2秒以内であれば合格といわれるが、久保は1秒を切る。今季盗塁を試みられたのは、20回登板して4回(許盗塁は2回)だけ。リーグ規定投球回到達の中では巨人大竹と並んで最も少なく、盗塁阻止にもつながっている。

 久保

 クイックは1つの武器。優れた球がなくて抑えられないなら、フォームを変えて抑える。クイックは走られないこともあるけど、打者のタイミングを外すことにもつながる。

 徹底して打者を観察する。だからこそ、首位を走る巨人からも3勝(1敗)を挙げている。「打席ごとでも相手の攻め方は違う。1打席目に何を狙っているかを探り、感じたことを2打席目から実行する」。

 これで最多勝の井納に並んだ。「満足はないです」と特別な感情はない。相手を観察し、投球スタイルを変えていく。磨き上げた投球術で、史上14人目の3球団で2桁勝利に到達した。【細江純平】

 ▼久保がロッテ時代の05年、阪神時代の10年に次いで3度目の2ケタ勝利。3球団で2ケタ勝利は12年グライシンガー(ヤクルト1度・巨人2度・ロッテ1度)以来14人目。日本人投手では西武で7度、ダイエーで3度、巨人で3度記録した工藤以来になる。セ・リーグでは7月25日に一番乗りした同僚の井納に次ぎ、久保とメッセンジャー(阪神)が2番目で10勝に到達。セ・リーグで10勝到達の1、2位が同一球団は04年中日(川上→山本昌)以来10度目で、DeNAでは初めてだ。なお、DeNAの10勝投手2人は07年の寺原12勝と三浦11勝以来。