<BCリーグ:信濃9-1新潟>◇15日◇長野

 独立リーグ、ルートインBCリーグ信濃の大塚晶文選手兼任監督(42)が、7年2カ月ぶりのスライダーで現役生活に幕を閉じた。今季最終戦となった新潟戦の6回表だった。3番手で現役最後のマウンドに上がる。3番荒井に対し、最速125キロ直球などでカウント2-2にすると、迷わない。110キロの縦に落ちるスライダーで空振り三振を奪い、すがすがしい表情を見せた。5球でマウンドを下りると、一塁側ベンチ前で家族が待つ。花束を受け取ると涙が止まらない。「右腕は5回も痛い目にあっているが、今日の区切りの登板で(右腕は)成仏してくれると思います」。レンジャーズ在籍時の07年7月1日、右肘に激痛を覚えてから5回の手術。現役復帰を目指し、家族に支えられながらリハビリを続けた日々が脳裏によみがえった。

 06年の第1回WBCでは日本の守護神として胴上げ投手となった。「WBCの時も最後はスライダー。今日も真っすぐで決めようと思ったけど、やっぱりスライダーなんだなと」。右の握力は戻らず、スライダーが思うように投げられない。今季は監督業に専念しようとしたが、重症心不全で心臓移植が必要な長野・諏訪市在住の小松愛子ちゃん(7)と出会い、最後の登板を決断。「愛子ちゃんのために最後の1球を投げられたことをうれしく思います」。気力で宝刀を抜いた。

 未練も断ち切った。「いいフォームだったし、肩肘も痛くないんです(笑い)。でも今日を区切りとして一流の指導者になりたい」。これからは指導者として、気合の雄たけびを上げる。【今井貴久】

 ◆大塚晶文(おおつか・あきのり)1972年(昭47)1月13日、千葉県生まれ。横芝敬愛-東海大-日本通運を経て96年にドラフト2位で近鉄入団。2年目に最優秀救援投手。03年は中日でプレーし、04年にポスティングシステムでパドレス入り。06年レンジャーズへ移籍。13年からBC信濃、14年は選手兼監督。通算成績は、日本が305試合で14勝23敗137セーブ。大リーグが236試合で13勝15敗39セーブ。182センチ、92キロ。右投げ右打ち。