<SMBC日本シリーズ2014:ソフトバンク1-0阪神>◇第5戦◇30日◇ヤフオクドーム

 値千金の一打だった。ソフトバンクの決勝打は選手会長の松田宣浩内野手(31)だった。0-0で迎えた8回裏2死一、三塁。孤軍奮闘を続ける阪神メッセンジャーの134球目だった。148キロ直球を捉えた打球が、二遊間を抜けた。欲しかった1点が、やっと入った。一塁ベースを回って自分に拍手。ファンも、ベンチのナインも総立ちだった。

 「秋山監督を日本一の監督にできたことが何よりうれしい。ここで決めなきゃという思いだった。追い込まれていたので、食らいついていった」。9回を何とかサファテが抑え、歓喜の胴上げに加わった。「勝って監督を胴上げしたい」と公言し、実現した。日本一で退任する秋山監督を「僕にとっての師匠」と呼ぶ。プロ1年目の6月。希望枠入団で期待されながら、不振で2軍落ちを通告された。その時の2軍監督が、今の秋山監督だった。雁の巣で迎えた指揮官がひと言、口にした。「やるぞ」と。

 松田は振り返る。「その言葉を今でも覚えている。そこからひたすら練習。1軍で、もう打てんとなっていた僕を成長させてくれた」。それまで普通に立てていたバットを担ぐようにするフォームに変えたのも、当時の秋山監督のアドバイスによるものだった。だから、プロでの師匠と言える。「あの人がいたから、今の僕がいるんです」。感謝の言葉は尽きない。

 そんな愛弟子を、秋山監督は日本一監督インタビューで「意外性のあるマッチしかいないなと。決めてくれました」とたたえた。松田はリーグ優勝を決めた「10・2」決戦でもサヨナラ打。シーズン終盤、節目の試合では必ずと言っていいほど輝いた。「最後まで、監督と目いっぱいやれたので誇りに思う」。最高の場面で最高の結果。マッチは、やっぱり、華のある男だ。【大池和幸】

 ▼松田が8回に決勝適時打。シリーズの1-0勝利は12年第4戦日本ハム以来で、ソフトバンクは初めて。1-0勝利で日本一を決めたのは54年中日、60年大洋、07年中日に次いで4度目だ。松田はリーグ優勝を決めた10月2日オリックス戦でサヨナラ安打。リーグ優勝決定試合と日本一決定試合の両方でV打は95年ミューレン(ヤクルト)以来、19年ぶり。