<東都大学野球:亜大9-2中大>◇第6週初日◇10日◇神宮

 亜大が3本の本塁打など13安打で中大に圧勝した。先発したエース右腕、東浜巨(なお)投手(3年=沖縄尚学)は7安打を浴びたが要所を締め、152球で10三振2失点完投。今季3勝目、リーグ戦通算20勝(12敗)を挙げた。20勝は現役最多で、6日の中大戦で到達した東洋大・藤岡貴裕投手(4年=桐生一)に並んだ。駒大は2回に打者11人で6点を奪い、国学院大に7-0で快勝した。

 節目の通算20勝にも、東浜に笑顔はなかった。2失点につながった「失投」をひたすら反省した。4回1死二塁。サイン違いから捕逸を招き、ピンチを拡大した。「ああいうミスは命取りになる」と下を向いた。生田勉監督(44)も「内容が悪すぎ。こんなんじゃエースになれない」と珍しく厳しい口調だった。

 それでも、レベルの高い東都で3年目にして大台に乗せた。今秋ドラフト1位候補の東洋大・藤岡ですら達成したばかり。東京6大学では09年5月、早大・斎藤佑樹(日本ハム)が同じ3年春に通算20勝を挙げている。1年時に大学日本代表で斎藤と接し、大学野球を盛り上げようとする姿勢が伝わった。「偉大な先輩。尊敬している」という。

 その斎藤よりも速い、152キロの直球を持つ。この日の最速は1回に記録した150キロ。「少しバテた」と言いつつ8、9回で4三振を奪い今季3度目の2ケタ奪三振だ。過去2年、2ケタは1度もなかった。冬場、「直球を空振りの取れる球質に」をテーマとした。打者目線から、球の角度に着目。制球を意識するあまり「リリースの位置が低くなっていた」という。腕の振りは変えず「5ミリでも上から投げよう」と軸足が沈み込みすぎないようにした。結果、今季は三振数が投球回を上回った。

 リーグで過去11人しかいない通算30勝も視野に入った。その大台も「通過点」だという。ただし、試合に臨む際、記録や数字などの雑念を持つことはない。「純粋に野球を楽しむこと。野球が好きで始めた。その気持ちを忘れずに、投げようと思っている」。マウンドに上がれば、いつも野球少年になれる。無垢(むく)な気持ちで、これからも投げ続ける。【清水智彦】