<東京新大学野球:東京国際大11-2杏林大>◇最終週2日目◇5月31日◇さいたま市川通公園球場

 元広島監督の古葉竹識監督(75)率いる東京国際大が13安打で7回コールドで杏林大に圧勝、リーグ加盟27年目で初優勝を果たした。就任4年目の同監督は、孫のような“1期生”の4年生らとともに、勝ち点5の完全Vで悲願を達成。プロで広島を日本一に3度導いた手腕は健在だった。全日本大学野球選手権(7日開幕、神宮他)初出場を決めた東京国際大は7日の1回戦で龍谷大(関西6大学)と対戦する。同大(関西学生)、東日本国際大(南東北)も同選手権出場を決め、26代表が出そろった。

 マウンド付近に出来上がった歓喜の輪を、古葉監督はベンチの前で見守った。表情を変えず、三男で助監督の隆明氏(42)や元巨人の浅野啓司投手コーチ(62)、そしてバットボーイの部員とも握手した。第2試合が控えていたため、胴上げは球場の外。「何十年ぶりかな、胴上げしてくれたなあ。うれしいなあ。みんなありがとう」。笑顔で輪になった部員たちへの第一声は、感謝の言葉だった。

 4年生をはじめ、同監督就任から入学した選手ばかり。孫のような平成生まれの部員たちに触れ「ビックリしたのは1年生が上級生と2、3日で冗談を言い合う関係になる。(上下関係の厳しかった)我々とは違う」と隔世の感を抱いていた。

 選手たちも、昭和50年代に広島の黄金期をつくった、鉄拳制裁も辞さない熱血指揮官だった姿を知らない。多くは親から同監督の偉業を聞いた。途中出場で5回に適時打を放った今井雄大(3年=鎮西)は、代走のスペシャリストだった元広島・今井譲二氏の次男。古葉監督は家にある写真で知った。父からは「(昔は)厳しかったぞ」と熊本を送り出されたという。

 厳しい姿勢は今も健在だ。雑なプレーや、細かいミスにも目をつぶらない。私生活でもあいさつ、礼儀などを厳しく指摘する。ただ「孫世代」に、フレンドリーな姿も見せる。主将の山田亮太(4年=大牟田)は「野球を離れれば陽気な方。ジョークを交えていろいろ話してくれます」という。古葉監督は「厳しいことを言い続けたけど、選手たちが頑張ったのが一番」と“孫たち”をたたえた。「いい子たちに恵まれた。最近はよく涙が出るんだ」と続け、目を潤ませた。【清水智彦】