<全日本大学野球選手権:東農大生産学部3-2横浜商大>◇7日◇1回戦◇神宮

 東京農大生産学部(北海道学生)が、横浜商大(神奈川)を退け、6年ぶりの全国1勝を飾った。先発の1年生右腕、玉井大翔(旭川実)が全国デビュー戦で6回途中2失点の好投。4番トマセン・ダニエル(4年=神戸弘陵)の大会1号本塁打などで得点し、計3投手の継投で競り勝った。

 最後の打者を遊ゴロに仕留めると、マウンドの陶久(すえひさ)亮太投手と池沢祐介捕手が同時に右手を上げてガッツポーズ、三塁側ベンチから選手たちが飛び出した。1点差をしのいでの勝利。6年ぶり全国1勝に、1年生の先発玉井も笑顔で整列に加わった。

 東農大生産学部のルーキー右腕が、あっぱれな神宮デビューだった。旭川実高時代には経験のなかった全国舞台のマウンド。初回はさすがに緊張した。先頭打者の2球目に与死球。犠打で送られた1死二塁から本領発揮し3、4番打者を連続三振。流れに乗った。

 最速145キロの速球にスライダーを交えて的を絞らせなかった。5回まで死球2個、わずか1安打でスコアボードに「0」を並べた。6回表に2連打を浴びたところで、ゆっくりと樋越勉監督(54)がマウンドに向かい、交代を告げた。失点2と力を出し切った内容に、同監督も「100点満点」とねぎらった。

 「立ち上がりは緊張しましたが、思い切り投げられました。うれしい」と玉井はチームの勝利を喜んだ。先発はこの日の朝に言われたが、監督や先輩から「若いんだから思い切って行け」と言われた。助言通り、内角を強気に攻めたのが好結果を生んだ。高校では3番手投手、昨夏の甲子園もブルペンから鈴木駿平(立正大)、成瀬功亮(巨人)の投球を見た。進んだ道は異なったが「負けたくない」という気持ちで、故郷佐呂間に近い大学を選んだ。

 樋越監督は「あいつは練習の時から、俺に投げさせてくれと、にらむように見る」と、春季リーグ開幕戦に起用した。その北海道教大函館戦では期待を上回る無安打無得点試合。6戦5勝負けなしと活躍した。今日8日、2回戦は慶大(東京6大学)と対戦する。「気持ちを切り替えて、また思い切り投げます」と玉井は右拳を握った。【中尾猛】