<全日本大学野球選手権:愛知学院大4-2東日本国際大>◇7日◇1回戦◇神宮

 神宮開幕戦で、被災地の思いを背負った東日本国際大(南東北)は愛知学院大(愛知)に逆転負けした。前日6日の開会式で宣誓した天野勝仁主将(4年=福島・日大東北)が4番DHで途中出場。2点差の9回表2死満塁から3番打者が打ち取られて打席は回らなかったが、「自分たちがやってきたことに悔いはありません。支えてくれた方々に感謝したい」と言葉を詰まらせながら、あいさつした。

 震災から88日目。東日本国際大の2時間30分の全国挑戦が幕を閉じた。3点を追う9回表。満塁から1点をかえして、なおも2死満塁。次打者には8回から4番DHで途中出場の天野主将が控えていたが、3番打者が三邪飛に倒れて力尽きた。だが、最後まで諦めない“心をつなぐ野球”を貫いた。開会式の宣誓で“復興への懸け橋になる”ことを誓った天野主将は「踏ん張る姿を見せられたと思う。僕たちも復興まで手伝いたい」と決意を新たにした。

 3回表1死三塁から4番DH小松大介(千葉商)の中犠飛で先制。神宮先発3度目のエース浜崎浩大(ともに4年=北海道栄)は自己最速タイ(144キロ)を3度マークしたが、5回に与四球から3連打で逆転された。だが、安打では相手を1本上回る11本。本塁憤死は4つあったが紙一重の果敢な攻撃を見せた。仁藤雅之監督(31)は「天野を中心によく踏ん張ってくれた」と選手たちの粘りをたたえた。

 天野主将の自宅のある浪江町は、福島第1原発から北に約10キロ。一塁側スタンドでは、避難勧告を受けて今も猪苗代町の避難所で生活している母理子さんと、事故処理にあたっている東京電力社員の父倍紀さん(ともに51)も応援した。理子さんは「(浪江町の)スポ少時代からの仲間も応援してくれました。選手も応援席も一体感があってよかった。悔いのない試合ができたと思います。今までで一番印象に残る試合です」と、ビデオを回し続けた。

 新チームには浜崎ら4年生3人が残留予定だが、天野主将は学生コーチに専念する。大学での選手生活を終えた天野主将は「多くの人たちに支えられて野球ができた。いつか日本一になれるようにがんばろう」と後輩たちにエールを送った。【佐々木雄高】