ノムさんが、14年春にも日体大監督に就任する。元楽天監督の野村克也氏(77)が4日、東京・世田谷の同大キャンパスで客員教授就任会見を行い、松浪健四郎理事長(66)から監督就任への強い希望を受け、事実上快諾。今後は日本学生野球協会の審査が必要になるが、現在は規定改定を検討中で、今年中にもプロ、アマ双方の研修を受ければ監督就任に支障はなくなる見通しだ。社会人野球、プロ4球団で監督したノムさんの大学球界参入が、一気に現実味を帯びてきた。

 客員教授就任のあいさつもそこそこに、会見場はさながら“新監督”就任会見へと変わっていった。野村氏は冒頭のあいさつで、中学生チームを指導した経験談、社会人野球シダックス監督時代の話などを持ち出しながら、自身の監督論を展開した。

 野村氏

 監督が変わればチームが変わるという信念を持ってやってきまして。プロで4球団の監督をやりましたけど、その4球団とも最下位のチームという変な縁がありまして。野球の一番の魅力は、野球の意外性。つまり弱いチームでも強いチームに勝てる。これが最大の魅力。日体大のチームがどれぐらいの実力あるかまだ見てもないですし、分かりませんけど、野球の本質、野球の魅力に準じて指導をしていきたい。

 大学生を「指導する」-。ビッグなプランを、独特のノムラ節で確かに口にした。

 現在の日本学生野球憲章では、昨年12月まで楽天名誉監督を務めていた野村氏が、学生を指導することはできない。現行ルールでは退団後2年が必要で、現在は退団後の年数を撤廃し、プロ、アマ双方が定める研修を受ければ、すぐにでも指導が可能になるように改正する方向になっている。

 そのことは大学側も重々承知した上で、松浪理事長からは熱いラブコールが続いた。「研修会を受けたらできるとか、まだ発表されていないので何とも言えませんけど、球団を離れてまだ1年しかたっていないということですから、あと1年。来年の春にはユニホームを着てもらえるんじゃないですか」と言った。大学のトップとして、14年春に野村氏を野球部監督に招聘(しょうへい)する考えを明確にした。

 現在首都大学野球連盟に所属する日体大は、11年秋に20度目の優勝を果たしたが、昨秋は4位に終わった。野村氏は「考え方のエキスを選手に注入するのが我々の大きな仕事。日体大の監督なり、指導者として迎えていただいたことで、その方針は変えるつもりはありません」と早くも意欲満々。プロ4球団、社会人監督と数多くの経験を持つノムさんが、学生野球を指導する日が現実になりそうだ。【前田祐輔】

 ◆日体大野球部

 首都大学野球リーグ1部に所属。1967年(昭42)に同リーグで初優勝し、以降優勝20度。80年には明治神宮大会で優勝して日本一に輝いた。現在は古城隆利監督。主なOBは95年新人王の山内泰幸(広島)、05年セーブ王の小林雅英(ロッテ)ら。

 ◆元プロの大学監督就任

 日本学生野球協会が定める現行の「元プロ野球関係者の大学野球部監督に関する特別審査規定」では、退団後2年の経過が必要になる。ただ現在は改正を検討中で、1月にアマ側がプロ側に、高校野球指導者就任を含めて、2年間の期間を撤廃し、プロ、アマがそれぞれ定める2度の研修を受ければ退団直後にも就任できる制度に変更する提案を行った。研修内容は5月をメドにプロアマ双方から持ち寄り検討するが、早ければ計5日程度で終了する見通し。今年中には新規定が決定する予定だ。

 ◆多くのチームを指揮した主な監督

 プロでは代理、代行を除くと石本秀一氏(タイガース、金鯱、大洋、大陽、広島)三原脩氏(巨人、西鉄、大洋、近鉄、ヤクルト)藤本定義氏(巨人、太陽、大映、阪急、阪神)の5球団が最多。石本氏は広島商、藤本氏は東京鉄道管理局でも監督を経験。野村氏はこれまで5チームを指揮。プロと大学の両方を指揮した監督は古葉竹識氏(広島、大洋、東京国際大)森茂雄氏(阪神、イーグルス、早大)田丸仁氏(法政二高、法大、東京)砂押邦信氏(立大、国鉄)らがいる。