<東都大学野球:中大2-0青学大>◇第2週第1日◇16日◇神宮

 トルネードの剛腕が神宮に帰ってきた。中大・島袋洋奨投手(3年=興南)が、最速148キロの直球を武器に青学大を撃破。2年ぶりとなる完封勝利を挙げた。昨年は春のリーグ戦で左肘に違和感を訴え、戦線離脱。9月にリリーフとして復活したが、不完全燃焼だった悔しさを晴らした。国学院大は杉浦稔大投手(4年=帯広大谷)が好投し、専大に先勝した。

 長い、長いトンネルから抜けた喜びを静かに表した。島袋は最後の打者を一塁ファウルフライに打ち取ると、ポンと小さくグラブをたたいた。球威は最後まで衰えず、8回でも140キロ台を連発。7安打されても、11年春の亜大戦以来となる完封勝利を挙げた。

 エースの復活を秋田秀幸監督(57)は特別な思いで見つめた。昨春の開幕戦で15回を投げ抜き勝利。しかし4月中旬に左肘に血がたまり投球が出来なくなった。「島袋は高校で全国制覇してファンは全国にいる。あいつをプロで見せたい」。治療に専念させ、調整も本人に任せた。登板できるようになったのは昨年9月。秋はリリーフで1勝したが、先発した2試合では勝てなかった。それでも「あいつしかいない」と今季の開幕戦を左腕に託した。

 そんな指揮官の思いに島袋も応えた。この日の4回、1死二、三塁の局面ですべて直球の真っ向勝負を挑んだ。141キロで一邪飛、147キロで空振りの三振を奪い、ピンチを脱した。「真っすぐが良かったので押しました。直球なら打たれてもスッキリしますし」と復活した球威に自信をのぞかせた。春先も投げ込みを100球程度に制限。調子が良かった1年時の映像を繰り返し見て、フォームを修正した効果が出た。

 初戦を制し秋田監督は「やっぱりエースが勝つとチームが乗る。左であれだけの投手はいない。大学で終わる子じゃないですから」と目を細める。この日の最速は148キロ。自己最速にあと1キロと迫り、完全復活を印象づけた。トルネードで甲子園に旋風を起こした怪物が再び目覚めた。【島根純】