<全日本大学野球選手権:上武大6-5亜大>◇16日◇決勝◇神宮

 苦労人の代打逆転満塁本塁打が、上武大(関甲新学生)を初の大学日本一に導いた。1点差に迫った直後の6回1死満塁、今春のリーグ戦わずか1安打の清水和馬内野手(4年=甲府工)が左翼席に運んだ。亜大(東都)を破り、3年連続12度目の出場で初優勝を飾った。準決勝から2試合連続完投の横田哲投手(4年=飯能南)が最高殊勲選手賞、最優秀投手賞の2冠を獲得。00年に就任した谷口英規監督(43)は、男泣きした。

 上武大の代打男清水には神宮2度目の打席だった。その3球目。初めて振ったバットがとてつもない一発を生みだした。6回、1点を奪い、なお1死満塁。打球は風にも乗って、左翼席に吸い込まれた。代打逆転満塁本塁打。「打ったのはたぶん、真ん中の甘い球。でないと僕、打てませんから」。清水が照れた。

 初打席は前日、明大戦の代打だった。送りバントを決めた。今春のリーグでは平成国際大戦の代打で、左前打した。1打数1安打2打点。これが全成績。大学初安打だった。満塁弾が2安打目で、大学初本塁打。満塁本塁打も代打本塁打も人生初だった。「レギュラーはとれなかったけど、やってきてよかった」。ヒーローはしみじみと話した。

 本職は遊撃手ながら、プロ注目の三木がおり、出番は限られる。サポート役に徹した。ベンチでは大声を張り上げ、一塁コーチにも入った。「守りには自信がある。やれることをやろうと」。ライバル三木が「我慢強い、コツコツやるタイプ。裏方の仕事も先頭でやってくれる」とたたえた。

 部員数161人。全員が「飛翔寮」で生活する。2月には鹿児島・徳之島でキャンプを行った。費用の一部は、倉庫の荷物整理、道路工事、引っ越しの手伝いなど毎週末のアルバイトで稼いだ。50人が選抜され、日本一を目指して鍛え上げてきた。清水は「そのメンバーには入りました」。

 上武大の建学精神を「雑草精神(あらくさだましい)」という。どんな状況にもくじけず、粘り強く努力して、新たな世界を開こうというもの。清水はそれを地で行って、日本一をつかんだ。谷口監督のうれし泣きする姿に「もらい泣きしそうになったけど、泣きませんでした」。ひと振りで主役になった清水が、こういって日本一のメダルに手をやった。【米谷輝昭】

 ◆上武大

 1968年(昭43)創立の私立大学。群馬県では最も古い私大で、学部はビジネス情報学部、経営情報学部、看護学部。所在地は群馬県伊勢崎市戸谷塚町634の1。主なOBはDeNA菊地、加賀、井納、中日松井雅、オリックス安達、ロッテ加藤。箱根駅伝に5年連続出場中。