<東京6大学野球:慶大5-0東大>◇第4週第2日◇7日◇神宮

 慶大の左腕・加嶋宏毅投手(2年=慶応志木)が東大相手にリーグ史上24度目(23人目)のノーヒットノーランを達成した。走者は8回無死で与えた四球の1人だけ。これまで完投もない2年生が、99球で準完全試合を達成した。慶大では10年春の竹内大助以来の快挙。これで慶大は勝ち点を3としてトップに立った。

 快挙を達成した加嶋を、江藤省三監督(71)が握手で出迎えた。「しっかり休め」とねぎらいの声をかけた。ヒーローは控えめに手を出したが、思いは強烈だった。「監督に『どうだ見たか』の気持ちでした」。口にこそ出さなかったが、握手のあとこう話した。

 完全試合を達成するつもりで先発マウンドに立っていた。「(完全試合を)見せつけるつもり、倍返しのつもりで『このやろう』と思って投げました」。1日の法大4回戦の先発を外された。代わりの先発は1年生、それも連投の加藤だった。その悔しさをこの日、晴らすつもりだった。

 スライダーが切れた。チェンジアップも効いた。9回最後の打者はこの球で3球三振に仕留めた。「気持ちは誰にも負けない。それが球に伝わったと思う」。最長5イニングの左腕が初完投。完全は8回に途切れたが、集中力は切れなかった。「完全まであと26人、25人と思って投げた。8回は打たれたんじゃないので切り替えました」。1死後に四球の走者が二盗を試みると、捕手の小笠原が刺した。残塁0。27人料理の準完全だった。

 今夏の北海道キャンプでは臨時コーチに訪れた城之内邦雄氏(73=元巨人投手)の指導の下、みっちり鍛えられた。スパイクを履いての50メートルダッシュ1日100本。200球の投げ込みは連日、2週間続いた。成果は球速に表れた。入学時130キロが11キロ増の141キロに。この日は制球を重視して136キロに抑えた。

 背番号19は無安打の先輩竹内大助(トヨタ自動車)から譲り受けた。「先週、会いました。軸足にしっかり乗せることなど竹内さんを意識しています」。周囲から記念ボールは野球殿堂入り?

 と聞かれると「部屋に飾ります」と言ってボールを隠した。投球を支えた強気が、試合後にも顔を出した。【米谷輝昭】

 ◆加嶋宏穀(かじま・こうき)1994年(平6)3月21日、東京都葛飾区生まれ。岩手・一関南小2年から野球を始め、中学は父親の転勤で葛飾区青戸中に入学。慶応志木では1年秋からベンチ入りし、2年秋からエース。3年夏の大会は初戦敗退で甲子園経験はない。慶大では1年秋にリリーフで1勝。遠投90メートル。好きな歌手は「GReeeeN」。178センチ、76キロ。左投げ左打ち。家族は両親と姉、妹。