<全日本大学野球選手権:創価大4-0佛教大>◇10日◇1回戦◇東京ドーム

 創価大(東京新大学)に、ヤクルト「ライアン小川」を超える可能性を秘めた右腕が現れた。高校まで外野手だった田中正義投手(2年=創価)が、公式戦自己最速154キロをマークし、4安打9奪三振で無四球完封。佛教大(京滋)を破った。

 田中が、直球を続ける。全国デビュー戦となった東京ドームのマウンド。1回先頭打者への初球に151キロを出すと、2球目は154キロで空振りを奪った。2番打者への5球目に再び154キロ。立ち上がりから12球連続の直球勝負で、球場をどよめかせた。

 1回は16球中、10球が150キロ超え。「行けるところまで飛ばして行こうと思いました。バッターが速いと思ってくれたら、フォークも生きてくる」と言った。今春リーグ戦デビューしたばかりの右腕が、無四球完封。117球を投げて、90球が直球。9イニング毎回150キロ以上をマークし、36球が大台を超えた。

 186センチ、86キロの堂々の体格。岸雅司監督(58)は「(ヤクルト)小川とは、ま反対。(171センチの)小川はめいっぱい体を使うけど、この子は普通に投げればスピードが出る。スケールが違う」と言った。左足を高々上げるライアンフォームとは無縁。フォーク、カーブ、スライダーを散らしながら、勝負どころは直球で攻め続けた。

 創価高までは外野手だった。背番号「8」を付けて、「4番中堅」で高校通算15本塁打以上。大学入学後に本格的に投手に取り組み、右肩痛もあった昨年は体づくりに専念した。2月には2000球以上の投げ込みを行い、下半身が安定。課題の制球難を克服した。

 巨人山下スカウト部長は「コンスタントに150キロ以上出る。今年のドラフトでも1位候補になる」と評価。投手歴が浅い分、伸びしろは魅力。1月、母校で自主トレ中だったヤクルト小川に、緊張で声も掛けられなかったという田中が、一躍大学球界のスター候補に躍り出た。【前田祐輔】

 ◆田中正義(たなか・せいぎ)1994年(平6)7月19日、横浜市生まれ。小学1年から投手として野球を始める。創価高には投手として入学するが、1年秋に野手に転向。3年夏は西東京大会4強。創価大では今春自己最速の153キロをマークして、リーグ戦3勝1敗。家族は両親、兄、姉、妹。186センチ、86キロ。右投げ右打ち。