<都市対抗野球:西濃運輸2-0富士重工>◇29日◇決勝◇東京ドーム

 西濃運輸(大垣市)が富士重工(太田市)に勝ち、33度目の出場で初優勝を果たした。先発佐伯尚治投手(31=九産大)が3安打無四球完封で、橋戸賞(最優秀選手賞)に輝いた。首位打者は打率5割5分で新人の伊藤匠内野手(22)が獲得。天皇、皇后両陛下が試合を観戦された。

 用意されていたくす玉が割られ、一塁側を埋め尽くした応援団から声援が飛ぶと、佐伯は涙を抑えきれなかった。「サエキコール」を受け、チームメートの手で3度の胴上げ。二塁も踏ませぬ完封勝利を「人生で一番です」と振り返った。

 5月の都市対抗予選の東海2次予選準決勝で、左膝半月板を負傷した。診断は全治3週間で、1カ月近く投球練習ができなかった。実戦復帰は16日の壮行試合で、3イニングだけ。それでも「言い訳せずやろう」と本番に乗り込んだ。

 初戦となった東芝戦で4回2/3を自責点1にまとめると、準々決勝の東京ガス戦では9回1失点完投。調子を上げ、大一番で本領を発揮した。林教雄監督(64)も「中1日でたいしたもの。恐れ入った」と脱帽だ。

 エースが橋戸賞を獲得し、ルーキー伊藤は首位打者に輝いた。決勝でも2安打を放ち、全2得点に絡んだ。「しっかり振っていこうと。(成績は)気付けば、という感じです」と4番は自信を深めた。

 日本一になったことで、今後は追われる立場になる。林監督は「フロックと言われないようにもっと鍛えたい」と慢心はない。11月の日本選手権で夏秋連覇を目指す。【加藤雅敏】