<東都大学野球:駒大3-1中大>◇第8週第1日◇21日◇神宮

 駒大が、未消化だった中大との3回戦を勝利し、01年秋以来26季ぶり27度目の優勝を飾った。勝ち点5の完全優勝は、94年春以来。1回にドラフト上位候補の4番江越大賀外野手(4年=長崎海星)のソロなど、2者連続本塁打で3点を奪うと、先発のエース左腕、今永昇太投手(3年=北筑)が9回1失点完投で、リーグトップの7勝目を挙げた。大学日本一を懸けて、明治神宮大会(11月14日開幕)に出場する。

 江越は、目に涙を浮かべて、3度宙を舞った。秋が深まる小雨交じりの神宮で、長く遠ざかっていた栄冠をつかんだ。

 「去年はあと1勝で優勝を逃して、入れ替え戦があって…いろいろあったところから、ここまで来た」と感激した。昨春はあと1勝で優勝の試合に敗れ、昨秋は最下位で入れ替え戦を経験。ジェットコースターのような1年を経て、ようやく歓喜の時がやってきた。

 勝利すれば優勝の大一番の1回、先制2ランの直後に4番江越が打席に立った。島袋の初球、131キロの直球を逆方向に運ぶ。「初球、真っすぐを思い切り振ろうと思った」。今季のリーグ戦中に長崎に住む祖母アサ子さんが亡くなった。心配をかけまいと、入院したことも知らされていなかった。試合に集中するため、葬儀は欠席。「何とか優勝して、いい報告がしたかったです」。そう言って、また涙ぐんだ。

 頼みの4番の1発で挙げた得点を、エース今永が守り切る。昨春は、優勝まであと1勝だった国学院大戦に先発し、敗れた。「今日の試合が一番苦しかった」とかみしめた。昨春は土壇場でV逸し、今季は勝負どころで勝利。就任3年目で初制覇した西村亮監督(40)は「私生活から、当たり前のことを当たり前にした」と言う。春季リーグ戦後から午後10時30分の消灯時間をつくり、厳守。掃除、服装なども今まで以上に、厳しく取り組んできた。

 そしてつかんだ01年秋以来の優勝。前回優勝直後に野球部寮にやってきた愛犬「コマ」は、9月20日に14歳で死んだ。1度も優勝を見られなかった愛犬の遺影を、ベンチに置いて戦った。長く遠ざかっていた歓喜の時を、きっとみんなが喜んでいる。【前田祐輔】