野茂の「過去」への思いはわかった。「現在と将来」についてはどう考えているのだろう。
今、最も力を注いでいるのが、自ら作ったNOMOベースボールクラブ(NBC)の活動だ。現役時代には、時間的にできなかったことを取り戻すかのように積極的に活動にかかわっている。
野茂「ここからいい選手が出てくることを考えているし、地域の自治体と結びつきながら、成功モデルを作りたい。野球を続ける人の受け皿になったり、子どもたちがスポーツの中で成長していけるようにしたい」
03年、NBCを設立した。非営利団体だから、運営的にはけして楽なわけではない。その中から、プロ入りする選手(育成選手を含む)は4人出した。認められて企業の野球部に移籍していく選手もいる。高校で野球を辞めていたかもしれない選手たちにとって、一つの受け皿の役割を果たしていることは確かだ。
「プロに行ったり、社会人野球へ行った選手たちに僕らと同じような考えが芽生えてくれれば、よりいいです。まあ、それがなくても、(野球を続ける)チャンスの場を作って、(プロ入りした)4人がそれをつかんでくれただけでも、一応満足しています」と野茂は言う。

野茂は現役時代にNBCを設立することにこだわったのには理由があった。
野茂「まずインパクトが違うと思ったからです。いいと思ったことを行動するのに、ひとりでも多くの人の心のどこかや、頭のどこかに種を植え付けておくということが必要だと思う。その人たちの中に5年後か、10年後か、花が咲くかもわからないですけど、行動することの意味はそこにあると思う。1年後、3年後、こう変わってきたということに意味がある。だから1人でも多くの人に種を植えるためにインパクトが必要だから現役時代にこだわった。口で言うだけは誰でもできる。いいと思ったことはやっぱりできる限り行動したい。そしてそこに賛同できる人を増やしたい」
言葉に力がこもった。
将来的な野球とのかかわり方を聞いた。
「わからないです。でも自分がいいと思ったことは行動すると思います」と言う。プロ野球から指導者の話が来たら、と聞くと即座に「ないと思います」と笑顔で言った。じゃあ、米国の球団から来たら。
野茂「ないと思います(笑い)。まあ、自分がいいと思ったらやるでしょうし…でも、ないと思います。今は、野茂クラブを中心にしながら、未来のプロ野球選手やメジャーリーガーのために、何ができるか考えていきたいと思う」
野茂らしい純粋な答えが返ってきた。
第1回の取材は、大阪・堺市のNOMOベースボールクラブで行った。写真撮影では野茂の社会人時代の「原点」ともいえる新日鉄堺のグラウンドのマウンドに上ってもらった。久しぶりにみるトルネードのフォーム。「まだ投げたい」というのは、彼らしい本音だろう。NOMOベースボールクラブは、野茂が新しく切り開く道の1つなのだと思う。
自分を貫き通す“野茂的”な生き方は、人々を引きつける。今の世の中で、少しだけ指標になるからかもしれない。彼の言葉、行動そのものが「野茂のメッセージ」である。さあ、来月は何を聞こうか―。
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野茂英雄(のも・ひでお)1968年(昭43)8月31日、大阪市生まれ。成城工-新日鉄堺。88年ソウル五輪に出場し銀メダル。89年、8球団の競合の末、ドラフト1位で仰木監督の近鉄に入団。体を大きくひねる独特の「トルネード投法」と、鋭いフォークボールによる奪三振などでいきなり18勝を挙げ、スター選手に。90-93年まで史上唯一の4年連続最多勝をマーク。
95年にドジャースに入団し、13勝6敗でナ・リーグ新人王。球宴にも出場し先発を務めた。ド軍2年目の96年(対ロッキーズ)、レッドソックス時代の01年(対オリオールズ)にノーヒットノーランを達成(両リーグでの達成は史上4人目)。
06、07年はメジャーでのプレーはなかったが、08年にロイヤルズで復帰。しかし白星を挙げることなく4月末に自由契約。同年7月、現役引退を発表した。
日米通算201勝155敗1セーブ、3122奪三振。現役時代のサイズは188センチ、104キロ、右投げ右打ち。03年にNPO法人「NOMOベースボールクラブ」を設立。家族は夫人と2男。
野茂氏のオフィシャルサイトがオープン。
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