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野茂英雄のメッセージ

田沢

 もう1つ聞きたいことがあった。メジャーリーグのキャンプが始まっている。今季は日本のドラフト指名を受けるのを拒否して、社会人野球から田沢純一投手(22)が直接メジャーに臨んでいる。

―あの選択を見たときに、どう思いましたか

「いや、今までにもいますからね。アマチュアから直接アメリカの野球に行った選手も。いいんじゃないですかね。それがより普通になっていくんじゃないですか。変なルールでしばってほしくないと思いますね。今までもそうですけど、直接アマチュアから行った人も、向こうでだめなら、戻ってきて日本のドラフトかかって、日本のチームで活躍できる。それでいいんじゃないですか」。

94年野茂英雄
94年野茂英雄 近鉄退団→ドジャース(任意引退扱い)
08年田沢純一
08年田沢純一 新日本石油→Rソックス(ドラフト指名拒否)

―変なルールということでいうと「日本のドラフト指名を拒否した選手が外国のプロチームでプレーして日本に戻ってきた場合は、社会人から行ったケースは2年、高校生から行ったケースは3年契約できない」となった(注1)。どう思いますか

「それはメディアとしてはどう思っているんですか? 僕の答えは決まっています。けれど、メディアとしての意見はどうなんですか?」。

―僕の意見を言うならば、無意味なルールだと思いますよ。それをしたからといって、日本のプロ野球から外に行く人が減るとも思えない

「ならば、メディアがもっと主張するべきじゃないですか。ニュースだけを流すのがメディアなだけではないんじゃないですか。ニュースだけならインターネットでも読めますし。こういうことを(影響力のある)誰かに言わせるだけじゃだめじゃないですか。本当は記者も1人1人の意見を持っているはずなんだけど、問題点は人に聞いて書く。あそこの新聞社はこんなカラーだ、というのは一応出ますけれど、それを言っているのは選手だったり、影響力のある人だったり…。アマチュアから行く選手というのは、世間的には立場が弱い。それを選手がこういった大人のしょうもないルールに縛られるということを許していることになる。本当許せないですけど、それを指摘するのに僕の言葉を借りなくても、いいんじゃないかとも思いますよ。きちんとメディアが書けば。誰が見ても(このルールは)間違っている。絶対間違っているじゃないですか。なんでこの子が行ったらアカンねん。マック鈴木は良くて、多田野の場合は良くて、なんでこの選手が行ったらアカンていう。おかしいでしょう…インタビューを受けている僕が言うのもなんですが、それをメディアが指摘するべきじゃないですか」。

―組織の側の論理からすると「日本の野球が空洞化する」「良い選手がすぐに行ってしまうのではないか」という危機感から出てきた策と思うが

「そのことについてはどう思うのですか?」。

―こんなことで止められるとは思わない。選手がどこでプレーしたいというのは、本来はその人の自由だ。上を目指す選手であればあるほど、自分が思うトップのレベルでプレーしたいという気持ちは止められるはずがないと思う

「そうですよ。組織側の意見もわかりますが、僕は間違っていると思います。日本で良い選手を育てるような環境を作れているかとなったら、(答えは)作れていないじゃないですか。プロ野球選手で辞めた人が、すぐに高校野球の監督、コーチにもなれないですし。指導者にもなりづらい。これだけ社会人野球などからプロに行くことで成り立っていたのに、(プロアマの障壁の改善には)あまり動こうとしているように見えないですし。そういうことをふまえていえば、組織側の意見というのは間違っているのではないか、と思います。そういうことをメディアは主張してほしい。立場の弱い一個人が、かみついたところでどうしようもないわけですよ。この構図でいくと、いつまでたっても僕個人が、一個人が、メディアを利用して言わなければならない。これはおかしいんです」。


時折、厳しい表情でインタービューに答えた野茂英雄氏

 野茂の顔が変わった。田沢のメジャー行きを契機に日本球界が作った流出阻止のルールについて聞いた時だ。

「まず、自分の意見を言ってください」。そこから、球界、メディアについての話になった。野茂の怒りは理不尽なルールとともに、マスコミも含めてそれを許している「構図」へ向けられている。物事にまっすぐな見方をする姿は、ずっと変わらない。

 野茂の取材では、時にこういう場面に出くわす。自分の考えを持ち合わせていないと胸元にストレートを投げ込まれてどぎまぎすることになる。

 だから、野茂の取材は真っ正面から向き合いながら、一方で自分の内面とも向き合う真剣勝負になる。

【注1】新日本石油ENEOS・田沢投手が大リーグ挑戦表明後の08年10月、日本プロ野球組織(NPB)実行委員会で「日本のドラフトを拒否して直接海外挑戦した選手は、日本に戻っても2年間(高校から行った場合は3年間)プレーできない」との取り決めを承認した。しかしアマチュア団体側からは反対の声が上がり、プロ野球選手会でも契約不可能な期間が生じることに反発。今年1月の選手会事務折衝では「暫定的な措置」との話も出るなど今後の対応に関しては不確定な部分も多い。

NOMO×NIKKAN

 野茂英雄(のも・ひでお)1968年(昭43)8月31日、大阪市生まれ。成城工-新日鉄堺。88年ソウル五輪に出場し銀メダル。89年、8球団の競合の末、ドラフト1位で仰木監督の近鉄に入団。体を大きくひねる独特の「トルネード投法」と、鋭いフォークボールによる奪三振などでいきなり18勝を挙げ、スター選手に。90-93年まで史上唯一の4年連続最多勝をマーク。

 95年にドジャースに入団し、13勝6敗でナ・リーグ新人王。球宴にも出場し先発を務めた。ド軍2年目の96年(対ロッキーズ)、レッドソックス時代の01年(対オリオールズ)にノーヒットノーランを達成(両リーグでの達成は史上4人目)。

 06、07年はメジャーでのプレーはなかったが、08年にロイヤルズで復帰。しかし白星を挙げることなく4月末に自由契約。同年7月、現役引退を発表した。

 日米通算201勝155敗1セーブ、3122奪三振。現役時代のサイズは188センチ、104キロ、右投げ右打ち。03年にNPO法人「NOMOベースボールクラブ」を設立。家族は夫人と2男。

野茂氏のオフィシャルサイトがオープン。

NOMOベースボールクラブ








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