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野茂英雄のメッセージ

お客さんにああ、今日よかったと思って帰ってもらうこと

プロの価値観とは

米に行って気づく

―たどり着いた「プロフェッショナルの価値観」というのは

「やっぱり、プロ野球だからエンターテインメントなんですよ。その中で僕の仕事は『毎回5日で(登板が)回ってくるということを楽しみにしているお客さんがいる』ということをわかっていなければいけないんです。その人が球場に来て、勝つだけじゃなくて『ああ、きょうは良かったなあ』っていう風に思って帰ってもらえるのがエンターテインメント。見たり、聞いたり、何かこう感動のようなものを感じて帰ってもらえる。それがあって、自分らも楽しんだり、当然結果も出さなきゃいけない。それがプロフェッショナルだと思う。それに気づいたのはアメリカに行ってからです。それまではわかっていなかったです。」

―それは自然に気づきましたか

「そうですね。毎日ベンチからいろいろな選手の様子を見ていても悪くないなあって思いました。日本だと『上がり(先発投手に与えられる休養の特権)』があるので、アメリカにいったばかりのころは『上がりだったらいいのになあ』って思ったこともありましたけれど、実際にはいろいろなことも球場で見ていて感じられる。毎日ベンチに入るのも良かったかなあって。」

―いろいろなスタイルを持ったプロの選手がいた

「そう。球場に早く来て走っている選手もいれば、遅く来ても相手チームが練習している最中でもグラウンドに入って自分の練習をして試合始まってもウエートトレーニングとかして、まったくチームと関係ないように自分のペースでやっている投手とかもいましし。どっちがいいとか悪いとかではなく、目的はチームが勝つために自分の出番にベストに持っていくための調整だから。自分がどのスタイルで行くのかとかも、見させてもらって考えました。」

―こいつはプロだなって思った選手はいますか

「ほとんどですよ。結局は結果を出さなきゃいけないんですよ。いくら面白いゲームをしたとしても、結果を出さなきゃプロじゃない。いくら変わった投げ方していたとしても、ファンが望んだとしても、そりゃ結果でなければプロとしてやっていけない。その存在感だったり、パフォーマンス+結果が続いている選手は尊敬する。」

―ドジャースタジアムでは、中4日で勝つだけじゃなく「ああ、きょうは良かった」といいながら帰っていく人をたくさん見た

「当時はね。何も考えなくてもそういう状況にあったということです。本当は、それを意識してできれば一番いいと思う。チームとしての役割だったり、ファンに与える影響だったり、そんなことも考えながら結果を出せたら一番いいですよね。」

 今回は雑談から始めようと思った。4月という人それぞれに新生活がスタートする季節。「パイオニア(開拓者)」と呼ばれた人が、いろいろな新しい世界に飛び込んだ時のことを軽く話してもらおうと考えた。野球以外のことも聞いて見たかった。新日鉄のころのことを聞くと「とにかく仕事はしなかった。でもよくしてもらったことは覚えています」と繰り返した。

 考えると、野茂は新日鉄も近鉄もドジャースも、うまくスタートをしている。本人にしかわからない苦労はあったのだろうが、新しい世界に飛び込んだ時に、素直さで吸収し適応していったのだろう。話の終着が、仕事をしていった先の「野茂のプロフェッショナルの価値観」にたどり着いた。「経験した」だけで終わりではなく、自然と自分の経験を理論化していた。野茂の「プロの価値観」は僕らにも参考になる。

洪水のようなWBC報道量の中で「真実」について考えた

 インタビューの終わりに野茂が話したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)についての感想が面白かった。野茂は「この1カ月ぐらい、僕の周囲のニュースはWBCか石川遼くんか麻生首相のことばかりでした」という。すべての試合をみていたわけではないというが、洪水のようなWBCの報道量の中で、考えたことがあったという。

2月16日、WBC日本代表候補合宿で城島(左)と笑顔で話す石原
2月16日、WBC日本代表候補合宿で城島(左)と笑顔で話す石原

 「表に出ていること、出てきたことだけが、真実かなあって思ったんですよ。そこに至るまでのことを本当はこうだって、ことを知りたかった。例えば広島のあのキャッチャーの子」と言った。広島石原慶幸捕手(29)のことだ。

 「たぶん試合に出なかったときは、彼はずっとブルペンで球受けていたと思うんですよ。あの一流選手が。たぶん気持ちよく(投手の球を)受けていてくれていたと思うのですよ。ブルペンキャッチャーをやっていたとしても。ピッチャーも、実際はほとんど4人しか使わなかったわけじゃないですか。松坂と岩隈とダルビッシュとあとソフトバンクの左の杉内と。そうした時にブルペンの〝真実〟本当の状況を一番知っているのはあの選手だと思うんですよ。自分のチームどう見ていたのか、相手のチームをどう見ていたのか。投げていなかったほかの投手たちも、あまりでなかった巨人の若手たちも、WBCをどう見ていたのか。そんな子たちが、次の世代をまかされていくことになる。WBC見ていて何を考えていたのか。彼らは控えじゃないんですよ。地元のチームではスター選手なんですよ。そういう人のことも知りたかった」。

 野茂らしい視点だと思った。限られた紙面スペースを「最大公約数」的なヒーローにさきがちな自分の仕事にも、チクリとする言葉でもあった。

NOMO×NIKKAN

 野茂英雄(のも・ひでお)1968年(昭43)8月31日、大阪市生まれ。成城工-新日鉄堺。88年ソウル五輪に出場し銀メダル。89年、8球団の競合の末、ドラフト1位で仰木監督の近鉄に入団。体を大きくひねる独特の「トルネード投法」と、鋭いフォークボールによる奪三振などでいきなり18勝を挙げ、スター選手に。90-93年まで史上唯一の4年連続最多勝をマーク。

 95年にドジャースに入団し、13勝6敗でナ・リーグ新人王。球宴にも出場し先発を務めた。ド軍2年目の96年(対ロッキーズ)、レッドソックス時代の01年(対オリオールズ)にノーヒットノーランを達成(両リーグでの達成は史上4人目)。

 06、07年はメジャーでのプレーはなかったが、08年にロイヤルズで復帰。しかし白星を挙げることなく4月末に自由契約。同年7月、現役引退を発表した。

 日米通算201勝155敗1セーブ、3122奪三振。現役時代のサイズは188センチ、104キロ、右投げ右打ち。03年にNPO法人「NOMOベースボールクラブ」を設立。家族は夫人と2男。

野茂氏のオフィシャルサイトがオープン。

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