
3年生は、再びけがとの戦いで始まった。
「春、3年生になる前に今度はベースランニング中にサードを回って転倒して、左膝の靱帯(じんたい)が傷ついて、ひざに血がたまった。すぐにギプスです」。
―では春の大会は投げられなかった
「いや、結局投げていました。ギプスがとれたらすぐに投げていました。でもすぐ負けました」。
野茂は順調に成長していた。球は速く、少しずつ評判は広まっていた。聞きつけた私立校も練習試合をするようになった。
「僕は球が速かったから、私立のチームにとっては最適の練習試合の相手だった。チームは弱いけど、ピッチャーはそこそこいい、と。それでちょこちょこ私立の学校が練習試合をしてくれるようになった。そこに勝ちだして、『もしかしたら、結構強いちゃうん』なんて、みんな思い出して。でも今振り返ってみると錯覚でした(笑い)。その時代の僕らは若かったから、強い学校に勝ちだしたことで自信つけていたのでしょうね」。
自信をつけていた矢先だった。毎日、150~200球近い投げ込みもしていた。夏が近づいたころ、肩に痛みが走った。
「投げすぎだと思います。全然肩に力が入らなくなって。投げられなかったんですよ。炎症をおこしていたんだと思いますね。投げ込みができなくなって、監督も気づきますよね。ブルペンで投げても球届かないようになって、肩痛いし、キャッチャーも『どうした?』って『わからん。力全然入らへん』ってなって。『もうあかんな』と思って病院に行ったら、あかん。もうダメだ、といわれて。『ああ、あかんのか』ってがっくりしていた」。
これも野球の神様の采配かもしれない。絶望的になったものの、休んでいたら大会直前になって、肩は戻った。投げられるようになった。
ハンデがあったにもかかわらず、野茂は1人で完投しながら最後の夏を勝ち進む。4連続完投勝ち。そして5回戦で私立の強豪校、興国と戦う。完投したが0―1での敗戦だった。
「勝ち進んだといっても5回戦ですからね。実は(2年の)秋も、(3年の)夏も興国高校にやられた。清水監督の母校にやられた」。興国は現在のNOMOベースボールクラブの清水信英監督の母校だ。ユニークな縁である。
野茂は負けた試合よりも、その1つ前の試合のサヨナラ勝ちを強烈に覚えている。
「僕らにとってはもうそちらの方がすごい試合だった。1―1で延長になって。最後に決勝打を打ったやつがレギュラーじゃないやつなんですよ。彼が打って勝って、みんなうれしいじゃないですか、みんなわかっているんですよ。僕なんかはレギュラーで出ていましたけれど、最後に決勝打を打ったやつは、いろいろなポジションをまわったけれど、どこでももうひとつ芽がでなかったというか、でもそいつが決勝打を打って。試合出られないやつらでも一生懸命声出したりして応援してくれているわけじゃないですか、やっぱり男子校だったし、マネジャー代わりしているやつも同じ学年だったし、それをみんなわかっていたんですよね。それがうれしかった。結局、次の試合で負けたのですけれど、そっちは僕の場合はあっさりしていました。負けても悔しいというよりは、前の試合で満足だった。(負けて)ああ、夏休みが来たってかんじですか(笑い)。高校生活で初めてですからね。夏が休みなの」。
―高校野球の3年間で泣いたことはありますか
「泣かなかったですね。泣きそうになっているやつもいましたけど、ほとんどのやつは『ああ終わったな』ってあっさりしていましたけどね。(3年間で勝った負けたで泣いたことは)試合ではないです」。
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野茂英雄(のも・ひでお)1968年(昭43)8月31日、大阪市生まれ。成城工-新日鉄堺。88年ソウル五輪に出場し銀メダル。89年、8球団の競合の末、ドラフト1位で仰木監督の近鉄に入団。体を大きくひねる独特の「トルネード投法」と、鋭いフォークボールによる奪三振などでいきなり18勝を挙げ、スター選手に。90-93年まで史上唯一の4年連続最多勝をマーク。
95年にドジャースに入団し、13勝6敗でナ・リーグ新人王。球宴にも出場し先発を務めた。ド軍2年目の96年(対ロッキーズ)、レッドソックス時代の01年(対オリオールズ)にノーヒットノーランを達成(両リーグでの達成は史上4人目)。
06、07年はメジャーでのプレーはなかったが、08年にロイヤルズで復帰。しかし白星を挙げることなく4月末に自由契約。同年7月、現役引退を発表した。
日米通算201勝155敗1セーブ、3122奪三振。現役時代のサイズは188センチ、104キロ、右投げ右打ち。03年にNPO法人「NOMOベースボールクラブ」を設立。家族は夫人と2男。
野茂氏のオフィシャルサイトがオープン。
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